CHRONO CENTER--- SIDE-A --
あなたは私を見てくれない。
ずっと傍にいるのは私なのに、いつも傍にいるのは私なのに、
一度だって私を見てくれない。
私の気持ちに気づいてくれない。
私のことなんて考えてもくれない…私はこんなにも好きなのに。
あなたはいつもあの子の事しか…キッドの事しか考えていない。
あなたを想う気持ちを受け止めて。
…ちょっとだけでいいの。
そう思うようになったのはいつからかな? あなたは初めて出会ったときから…ううん、再会かな。 あの日…、アルニ村にあなたが来た日。 私にとって、あの時からあなたは特別な人だった。 「違う!僕はここにいる!セルジュは僕だ!!」 「やめて!あの子はもう死んでいるのよ!変なこと言わないで!!」 最初はデタラメだと思ってたかもしれない。でも、何故かあなたの事は他人とは思えなかった。いつの間にか私、…10年前に死んだはずのセルジュをあなたの中に見ていた。 「やっぱりここに居たね。さぁ起きて。いつまでも寝ていたら今日に置いて行かれるわよ。」 「レナ………どうしてここに?」 「どうして?じゃないでしょ。あなたの事が心配だから来たのよ、セルジュ?…なんて、ちょっと違和感あるわね。」 どうしても放って置けなかった。ううん、…離れたくなかった。 ただ、どうしても一緒にいたかったの。 理屈じゃないの。うまく説明できないけど、 その………私の心があなたを求めている………そんな感じだったの。 「心配かけてごめん。けど僕にもよくわからないんだ。気がついたらオパーサの浜で倒れていて……」 「ほぉら、ダメよ。そうやってマイナスに考えちゃだめよ。キリが無いでしょう。」 「ありがとう、レナ。あれから考えてみたんだ。やっぱり僕は確かめなくちゃいけない。僕に何が起きたのか、なぜ僕はこの世界にいるのか、例え何があろうと前を向かなきゃいけないって。」 「そうそう、人間自分に素直じゃなくちゃね。でね、私も考えてみたんだ。あなたは事故か何かで記憶を失って、別人なのに自分をセルジュだと思ってるんじゃないかって。ちょっとおかしいかもしれないけど、あなたの事どうしても他人とは思えないの。だからね、私も一緒に行くね。」 だから私、あなたについて行く事にしたの。…ついて行きたかったの。 あなたを一人で行かせてしまったら、きっと後悔していたから。 ………もう2度と会えなくなる。…そんな気がしたから。 「ありがとう。やっぱりレナはレナだね。君がいると心強いよ。」 「どう致しまして♪それじゃあよろしくね、セルジュ。」 私の同行に、あなたは笑顔で返してくれた。 このとき私は不思議でどこか懐かしい気持ちになったっけ。 そう…遠い昔、幼いあなたと過ごした時に感じた、忘れかけていたあの気持ち…胸がドキドキするような、とても不思議な気持ちに…。 いっそのこと、このまま2人だけで…なんて考えたりもした…かな? 「ちょっと待つでしゅる!ポシュルも行くでしゅる〜!」 「ポシュル!?何であなたがここに?遠出していたんじゃなかったの?」 「ポシュルはレナしゃんの楽しい気持ちに引き寄せられて戻って来たんでしゅる〜。あんたしゃんホントに憎いでしゅるね〜♪彼氏ゲットで幸せ独り占めでしゅるか〜♪」 「な・・・・何に言ってるのよ!?彼とはまだ昨日会ったばかりで」 「照れることないでしゅるよレナしゃん♪そういう事にしとくでしゅる♪」 「もう!言っておくけど、一緒に来ても骨なんて買ってあげませんからね。」 「イイでしゅるよ。ポシュルはレナしゃんの幸せを分けてもらえるだけで十分でしゅるよ♪」 「もぉっ!ポシュルったら!まだそんなんじゃないってばっ!!・・・・・きゃっ!」 ヤダ…私ったら何言ってるのよ!? 恥かしくなって思わず口を塞いじゃったのを覚えてるわ。 ポシュルの言葉についムキになっちゃったけど、本当はポシュルの言う通りだったかもしれない。幸せとまでは行かなくても、それに近い予感を私は感じてた。 だって私、口では別人なんて言ったけど、この時から…いいえ、初めて会った時からあなたの事をセルジュだと思っていたから。 …もしかしたらセルジュは生きていたのかもしれない。 そして、これから始まる、あなたとの…セルジュとの未来には何が待ち受けているんだろう。 …私の胸はそんな期待でいっぱいだった。 「さあ、セルしゃん、レナしゃん、テルミナに到着でしゅる。ここに来るのは久しぶりでしゅる。」 「そうね。溺れ谷が閉鎖されてて通れなかったから半年ぶりかしら…ん?セルジュ?」 「う〜ん……」 この時私、あなたの行動がすごく気になったのを覚えているわ。 テルミナの町並みを物珍らしそうに見ているんだもん。 もしやと思って聞いてみたんだけど…。 「ねぇセルジュ。ひょっとしてあなたテルミナに来たの初めて?」 「いや、初めてというか…こんな大きな町があるってことすら知らなかったんだ。」 「セルしゃんテルミナを知らないんでしゅか?世間が狭いでしゅる〜。今まで一体どこに住んでたんでしゅか?」 「こっちが聞きたいよ!僕にも何が何だか…だいたい僕の世界じゃ溺れ谷なんて通れなかったし、この先何があるかなんてわからないし……」 「セルしゃん、弱気は禁物でしゅる。せっかく来たんでしゅる。不安なんか吹き飛ばして楽しく行くでしゅる。レナしゃんからも何か言ってあげるでしゅる。」 「………」 「…レナしゃん?」 …何かしら?この感じは? 初めてじゃない…前にも感じてる でも何処で………? 「レナ。レナ、一体どうしたんだい?」 「ううん、別に♪何でもないわ♪セルジュ♪」 「な…何だい?急に……」 「エヘヘ♪」 やっぱり…やっぱりあなたはセルジュだね。 …きっとそうだよね。 そう思うとすごく嬉しかった。 ううん、絶対にそうだと思った。あなたは間違いなくセルジュだって。 だってね、このとき感じた気持ちは、あの時と全く同じだったんだもの。 そう…あなたとの二人だけの、遠いあの日の思い出と………。 もう10年以上も前になるかな。 あれは私たち二人が初めて風鳴きの岬に来た時だったわ。 「ねぇセルジュ。ここがそんなに珍しいの?村からそんなに来てないのよ。」 「うん。だって初めてなんだよ、こういう所は。」 そういえば、この時も私あなたの行動が気になっていたわ。 だってあなたったらいつも以上に、物珍しそうに周りを見ているんだもの。 二人で初めてオパーサの浜に来た時も同じだったわ。 考えて見れば、あなたって初めての場所に来るといつもそうだったわよね。 好奇心って言えばいいのかな?もうこうなるといつも好奇心に任せて、私を置いて一人で先に行ってしまうの。いつもなら、それがあなたのいつもの行動パターンだったっけね。 だけど………、 「ふ〜ん……それじゃあさ、もっと奥まで行って見ない?」 「えーー!?い、いいよ行かなくても。」 「もう何言ってるのよ?せっかく来たのに。それにこの先には石碑があるのよ。記念に見て行きましょうよ。」 「そんな事言ったって、ここ強いモンスターが出るって母さんが言ってたんだよ。もし襲われたりしたら」 だけど、何故かこの日だけはあなたが弱気だったみたいに見えたの。 だって何だか怖がっているみたいだったんだもん。 いつもだったら、こういう時だけはあなた一人で先に行っちゃうのにね。 オパーサの浜に行った時なんて、ちょっと目を離した隙に一人で行っちゃって、探すのに苦労したんだから………ううん、私一人だけでいるの、すごく不安で怖かったんだから…。 「大丈夫よセルジュ。私がついてるじゃない。お姉さんがリードしてあげるわ♪」 「お姉さんって、レナは僕と同い年じゃないか。」 「気にしない気にしない。さぁ行きましょう♪」 「わわ!ちょっとそんなに腕引っぱらないでよ!レナってば!!」 だから、かな…この時だけはちょっとお返し♪ーー私に不安な思いをさせてくれたお返しにーーだから腕ずくで強引に引っ張って行ったのよ。 この時はもう、あなたをリードしてあげたいっていう気持ちで胸がいっぱいだったんだよ。 私すごく楽しかったんだよ。 あなたが一緒にいてくれるなら、それだけで楽しかったんだよ。 だからずっと一緒にいたいと思ってた。 でも……それすら叶わなくなるなるなんて……あなたとの思い出がこれが最後になるなんて、夢にも思わなかった……。 セルジュ…あなたは気づいてくれますか?この私の心が癒えていくような嬉しい気持ちに…。 この時の私の嬉しい気持ち……それは私があなたをリードしてあげたいっていう気持ち…そしてあなたと一緒にいられれば楽しいっていう、あの頃の自分に戻れた嬉しい気持ち。そして何よりあなたは私の傍にいてくれる。だから私、幸せな気持ちで胸がいっぱいだったんだよ。 「どうしたのさ、レナ?さっきから。」 「何でもないわ♪さぁ町に入りましょう♪私がリードしてあげる♪」 「え?リ、リードって??」 「だ・か・ら、私が案内してあげるって言ってるの。案内、必要でしょう。さぁ行きましょう♪」 嬉しくて、ついあなたの腕に抱きついちゃうくらいにね。 「ちょ、ちょっと!レナ?」 「やっと出発でしゅるか?ポシュル待ちくたびれたでしゅる〜。」 すごく幸せだったんだよ。だってあなたが…セルジュが一緒なんだもん♪ これからまた、私たちの思い出が始まると思うとすごく嬉しかった。そう信じてた。 ううん、信じたかったの。 もう2度とあなたと離れ離れになるなんて考えたくなかったから。 この幸せがどうかずっと続きますように ずっとセルジュと一緒にいられますように お願いセルジュ………もう2度と私からこの幸せを奪わないで そう思っていた時だったわ。 「遅ぇーぞ、セルジュ!」 あの子が…私から幸せを奪おうとするあの子が現れたの。 第2話へ……… 後書き 初めまして。僕はクロノクロスが大好きなminatakeと申します。 この小説は僕自身レナが大好きなので、こういうのもいいなぁという想いから描き始めました。 10年前に大切な人セルジュを失ってしまった レナがもう一度、幼かった日々の幸せを取り戻せるのなら…という気持ちで描いています。 ちなみにレナの心の動きは、僕が彼女の気 持ちを想像したものなので、多少ゲームよりずれているかもしれません。それでも、レナにとって目の前に現れたセルジュは、本当に思い出 の中のセルジュであり、心から好きだった…いえ、愛していたと思っています。 セルジュにはレナの気持ちはどう映ったのでしょうか?
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