■ Hoku作・ショートストーリー |
この作品は、「クロノ・クロス」の物語のその後をつづった文章です。 舞台は我々の世界、「日本」の「東京都」。 主人公のリュウは、外国人高校生の16歳の男の子。 父親の都合で、東京に数年前から家族と住んでいる。(なお、家族構成は不明) そんなリュウはある日、とある交差点で不思議な少女と出会う。 こうして物語は、始まる…。 物語は、主人公リュウの視線で進んでいきます。 あの少女は何者なのか、自分は一体何者なのか。 「遠い約束」は、今果たされるのです。 …とてもとても長く、眠りから覚めたくないような夢を見ていた。 えっ、僕は誰だっけ?セルジュ…? 僕の名前はリュウ。 家庭の事情があって日本の東京都という場所で暮らしている。 そんな平凡な日々を僕は暮らすはずだった。 あれは僕が16歳の時、もう少しで誕生日を迎え17になる頃だった。 僕はいつものように、高等学校へ自転車で走っていった。 その通学路の途中に大きな交差点がある。 そこで、不思議な体験を僕はした。 人ごみの中、僕はゆっくりと横断歩道を渡った。 その時、少し変わった服装をした金髪の女の子がいた。 その子は周りをキョロキョロ見渡していて、まるで誰かを探しているようだった。 「なんだあの子。…?!あれ、あの子どこかで見たような…。え…」 突然、脳裏から滲んだ記憶が微かに見えた。 僕は思わず目を閉じて、数秒してからその目を開けた。 あれま、いない…。 その子の姿は見当たらなかった。 「って!ヤバイ!もうすぐ赤になる!急げ!」 僕はこの日24時間あの子のことに悩まされた。 次の日。 あの交差点には、あの女の子はいなかった。 「やっぱりあれは幻かな」 僕はさっさと交差点を渡り、学校へ向かっていった。 学校の休み時間。 友達とイロイロと話をしている。いつも話題はろくでもないことばかり。 でも、まともな話をするよりか、こんな馬鹿げた話をしている方が好きだ。 僕はふと、あの少女のことについて口から音を出した。 「俺さ、見ちゃったんだよ・・・」 僕は普段は自分を「俺」と呼んでいる。 「は?何を?」 友達がバラバラに同じ言葉を僕に問う。 「このノリだと幽霊に決まってんだろ?!しかもよ、それが交差点だぜ・・・」 あの日以降、例の少女を友達の前では「幽霊」として僕は取り上げた。 「マジ?!その幽霊どんなやつだよ?」 「それがよ、金髪の女の子なんだよ。なんか誰かを探してるみたいだったな。 でも、見ても別に恐いとかそういうのはなかったぜ」 「えー、お前もしかしてロリコン?」 少しロン毛の背の低い友達が言った。 「ンなわけねーだろ。黙ってろチビ。ソン時だ。デジャブーってあんだろ。 それがうっすらとだけど出てきたんだ。そんなかに女の子が中心にでてきて〜」 チャイムだ。休み時間終了。 「んじゃあ、また後で」 「おー」 僕らは授業の準備を進めた。 帰宅時間。 「じゃ〜な〜リュウ」 「おう」 僕はあの少女のいた交差点で友達と別れた。 「今日はいるのかな」 僕は辺りをよく見回した。 でも少女らしき姿は全く見当たらない。 「やっぱりあれは幻なのかな・・・。学校じゃ調子乗って幽霊とかいったけど」 僕は諦めてペダルをこごうとした。 いや、やっぱり確認しておこう。 もう一度ざっと辺りを見回したが、期待は答えなかった。 今度こそ僕は帰ろうとした。 だが、足でペダルを動かそうしたとき、耳に不思議な声が入った。 またしつこく辺りを見回すが勿論少女はいない。 けど、確かにその声は聞いた。 なんて言ってるのかはエコーみたいに聞こえたからよく分からなかったけど・・・。 その声は少女に間違いないんだ。 そう思った瞬間、僕の視界は突如暗闇と化した。 「何だここは!おーい!誰かいない?!いるならなんか言ってみて!」 僕は試しに何度か暗闇の中で叫んでみたが、誰も返事はしなかった。 「あ、そーか!君が俺を呼んだのか?!」 今度は少女に言ってみた。 だが結果は同じ、返事は響きもない。 「いきなり何だよ…、熱でもあんのかな〜、ここどこだよ!」 その時であった。 突然視界がパァーッと光り、僕と永遠に続く暗闇を飲み込んだ。 ・・・気が付くと、僕は砂浜に立っていた。 同時に、あるビジョンが浮かび上がる。 ここの浜で赤い服を着た金髪の女性が僕に手を差し伸べてくれたというものであるが、 映像は色褪せていてよく見えなかった。だが、どこか懐かしい様な気がしてしょうがなかった。 なんだろう、この不思議な気持ち。 もうどうしようもなかった僕は、ただただ寄せては引く波をぼーっと見ていた。 だが可笑しなことに、普通なら絶望するしかないはずであった僕の心は、180度回転して癒えていった。 原因はこの景色だった………と思う。 「お待たせ、セルジュ!」 僕はハッと振り返った。 その先に、一人の茶色の髪に緑色の目をした、同い年くらいの女の子が後ろに手を組みながら歩いてきた。 「ああ、レナ」 と、男の声も別のほうから聞こえてきた。 僕はもう一度別の方へ顔の向きをかえた。 僕は、唖然とした。 なんで、なんで僕がいるんだよ。 そのセルジュという男は、今の僕をそのまま鏡に映したような少年だった。 「あのぉ…」 僕は彼らに話しかけた。 でもなかなか振り向いてくれない。 まるで見えていないようだ…いや、見えてなかったんだ。 2人は、少し前へ歩いていった。そして、セルジュはキラキラした動物の鱗を女性…レナに渡した。 2人は、笑顔で向き合った。 僕は、ただ2人を見ることにした。でも、なぜかそれは僕をあの波のときのように温めた。 とても懐かしい、不思議な気持ちになった。 けれどもそれと同時に、不思議な声が聞こえた。 「セ………ジ…。セ……ル……ジ……ュ…」 「…?!」 「あなたが……ルジュ……」 「お…俺を呼んでるのか?!」 僕はまた叫んだ。気づくと先ほどのセルジュとレナは既にいなくなっていた。 「どこにいった?!」 僕はあたりを見回した。 ザザアアアアアアアア・・・・・!!!!!!! 沖のほうから、大きな波が押し寄せてきた。 僕は必死に逃げたが、すぐに飲み込まれてしまった。 「セルジュ…、セルジュ………」 俺は……誰だ………? 僕は…僕は…!!!!! 君は……、誰……。 でも、どこかで聞いたことある、懐かしい声…。 僕は… 君を… 知っている? 遠い遠い、もう手の届くことの無いどこかの世界で交わされた、遥かな約束… 「やっと… やっと会えたね、セルジュ…」 「…」 僕は不思議な青い空間で、君と向かい合って立っていた。 「―違う!ぼ… 俺は!リュウだ!!」 「…」 二人とも黙ってしまった。 「これを見て…」 少女は手から何やらお守り袋のようなものを出した。 「!!」 僕ははっとした。涙がこぼれていたからだ。 「僕は…、僕はセルジュ… だ…」 「セルジュ……」 「君は… サラ… ううん、キッド?いや、そうじゃない。君はサラであり、キッドなんだね…」 僕はそっと少女に近づいた。そして、そっと彼女に触れようとした。 だがその途端、突然辺りがパッと光った。そして、またあの浜辺に戻っていた。 「う…」 「セルジュ、セルジュ!!おい!!」 何やら懐かしい声が僕の耳に入った。 「へへっ…、久しぶりだね、キッド」 僕も懐かしい格好にいつの間にか着替えていた。 赤いバンダナ、グレーのベストの下に黒のTシャツ、紐のネックレスに茶色の手袋、更に青い少しダブダブのズボンまでぴったり「セルジュ」だった。 「やっと果たせたな、遠い遠い、約束を…。まさか…忘れてネェよな?!」 キッドが腕を組んで僕を下から覗き込むようにして言った。 「勿論覚えてるよ」 僕が笑顔で言った。 「懐かしいな…、本当に」 キッドが海のほうを見つめて言った。 「うん…、僕は君がいなければ…。本当に有難う」 僕は目を閉じて、少し小声でうなずいた。 「馬鹿だな、セルジュ…」 ・・・Fin. |
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