クロノプロジェクト外伝「帆船操舵演習」

 めに…

 毎度クロノプロジェクト(以下略CP)をご覧下さり有り難うございます。
 たぶん、この物語をご覧になる方は既にシーズン1は読み終えた方だと思われますが、まだ読み終えていない方でも一応入れる様には作ったつもりです。

 シーズン1終了時に予告しておりました3ヵ月後にシーズン2は都合により守る事が出来なくなりましたが、来年2007年からスタートという方向で「先行公開版シーズン2」も登場する事となります。詳しいスケジュールはまだ決めていないですが、全部で一応4回の予定で2ヵ月に一度くらいの感覚でやれたら良いかなとか思いつつ、本当に未定です。(おい)

 本年度はCPはどころか、私の管理サイトの一つであるクロノ・センターすらも管理しておりません。(^^;まぁ、掲示板やリンクのサポートなどは受け持っていますし、クロノ・トリガー!というサイトの運営はなんとかしているんですけど、他はぜずさんに代行して頂いております。お世話になりますぜずさん。(^^;

 さて、外伝ですが、これはとりあえずCP世界の見えざる現実にスポットを当てております。外伝で触れた世界の姿は今後のCPでも色々な所で出てきますし、既にシーズン1で登場しているものもあります。
 違和感を覚える内容もあるかとは思いますが、そこはREDCOWワールドとして理解して頂ければ幸いです。(おい)まぁ、これは可能性の未来です。こんな世界もあるのかもしれない。そしてそれが続いてしまったら…?

 …そんな「もしも」で楽しんで頂けたら幸いですし、ご感想などどしどし頂けたら嬉しいです。シーズン2登場まで暫くありますが、この話で楽しんで頂けたら幸いです。

 
 
 
「…今日は帆船操舵演習の日ね。」
「あぁ。」
「………無事に帰ってきてね。」
「ははは、馬鹿だなぁ。」
 
 俺は彼女の頬に触れた。
 彼女は膨れ面で俺の胸に触れ、
 
「もう。」
 
 俺は彼女を抱きしめた。
 彼女は静かに俺の胸の中に収まる。
 暖かい。
 
 まだ寒い冬の終わり、温もりが懐かしい。
 
 
 
 
 帆船操舵演習…、
 
 
 ルディア王国は魔王戦争の傷が癒えぬ時代より、世界中の諸領域の発展のために急速に海上貿易を加速させる。ガルディア21世により進められるこの政策は、問題となった戦争が人種差別に限らず、諸国間の生活水準の開きなど多くの格差や文化的無理解が背景にあることがあった。
 国王は諸領域に対する迅速で大量な復興物資輸送のために、海運を大きく強化する舵を切る。それはその後の400年の世界の安定的発展と、ガルディア王国の基盤を盤石なものとする助けとなった。
 後の歴史家はガルディア21世のことを「再臨王」と呼び、初代王と並び称される中興の祖とするが、その呼び名は間違いではなく、確かにその後のガルディアを決定づけたといえた。
 
 現在はその21世の偉業を讃えるとともに、海上貿易の重要性は勿論、現在の世界を支配するガルディアという一つのスーパーパワーが、初心を忘れていないということを諸国に示す意味もある。
 そして、その船の操舵技術は王族として持つべき嗜みとされ、王家に生まれた男子は勿論、王家に入る男子も必ず習得する事が義務づけられていた。
 
 演習は過去の時代は1年にも及んだが、今はさすがにそれほどの時間を掛けることは無くなった。しかし、短縮されたと言っても3ヶ月もの航海を旅することとなる。これは今でも当時とほぼ同じ帆船を利用することで、海の厳しさと重要さを身を以て体験すると共に、王族として恥ずかしくない勇気と忍耐力を持つことが求められるためだった。
 そして、この3ヶ月という時間は王族の違いは無く、ただの1乗組員から叩き上げられる様な訓練を受けることとなる。
 
 
 勿論、彼もまたその技術を過去の王族と同様に受けることとなった。
 
 
 
 
「おい!新入り!!さっさとその荷物を片付けろよ!」
「はい!」

 
 
 まだ冬だと言うのに、船の底は暑い。
 積み込みから始まり、積み出しに終わると呼ばれるこの訓練。
 
 今まで受けてきた訓練と全く違う事は、王族ではないただの人だということ。
 暫く自分の身分が王族とされてきたことに慣れていた俺は、久々に自分が一人の民であることを思い出した。
 それはこの国で普通に生きていれば…当然に存在した現実だった。
 
 
おい、そこじゃない!それはあっちだ!向こうの山に綺麗に積み上げとけよ!
「はい!」
「よし、それが終わったら、積荷の検収に行ってこい。いいな?」
はい!了解しました!
 
 
 船の出航前から訓練は始まっていた。
 積み込みが終われば、検収し、そしてそのチェックを書記に持って行く。それが終わったら甲板の清掃に帆の確認。主武装の大砲の清掃と点検も彼には義務づけられている。
 …船が出るまでの時間が長い。
 
 だが、すでにこの訓練が始まった時から船での暮らしが始まる。
 全てを他の乗組員達と同様に寝食を共にし、全て同じ条件で生活する。
 それは同時に私的行動の制限の始まりでもある。
 
 
「よぉ、新入り!ブライン中尉の命令はわかってるけどよ、検収の書式見てこいよ。」
「え、でも…」
「なぁに、検収ったって、実際にやるのは降ろす時さ、積み込まれた積荷の検収はすでに済んでいる。今お前さんが勉強すべきは書き方さ。」
 
 
 スキャット曹長はこの船倉のリーダーだ。
 青い髪に青い目をした彼は今年で30歳で、先月長男が生まれたそうだ。
 なのにこの航海に出なくちゃならない。
 確かに仕事だけど、それこそ俺の心配より彼の方が放り出して良いって俺は言いたい。
 
 
「いえ、俺の仕事です。させて下さい。」
「そうか?まぁ、無理すんな。」
「はい、有り難うございます!」
 
 
 厳しい上官の叱責はあるが、慣れてしまえばどうって事無い。
 同じ世代の仲間達とは打ち解けたし、何より制限された環境にはもう慣れた。
 ここの生活は確かに制限があるが、それは王宮も同じ。
 あえて違いを言えば御上と下っ端の違い…一見すると御上の方が上に見えるけど、上は上で自由が無い。お飾り宜しく笑顔で手を振って、裕福な暮らしは出来るけど自由に動き回るなんてできない。
 …まぁ、有名な某お転婆姫様もいるけど。
 
 得るものは有っても、何かを失うわけではないんだ。
 …いや、下っ端は粗末な扱いだけど…気楽だ。
 俺にはこっちの方が合っている。
 
 俺は水を得た魚の様にって言えるくらいこの環境を楽しんだ。
 体を動かしている方が性に合っている。…そう思う。
 
 
 
 ドドォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!
 
 
 
「出航!」
 
 
 号砲一発、船長のかけ声のあと船は動き出した。
 長い航海が始まる。
 
 
 4日程でガルディア海を出た俺たちの船は、最初の目的である南メディーナを目指した。
 南メディーナは魔族達の暮らすメディーナ大陸の中央南部に位置する、小さいながら徐々に発展を始めている新しい港町。
 ここはメディーナの人々が、人との友好的交流を始めるための入り口として設けた場所だ。
 
 その間、俺は毎日5時に起きて甲板の清掃に始まり、その後食事を作り、みんなが食事をとった後に食事をとる。そして後片付けをしてから見張り役としてマストに上り昼過ぎまでそこで過ごした。  
 その後は船長の所で航海技術講義を3時間受けた後、夕食の支度をして、またみんなの後に食べてから後片付けをするという感じだ。
 その後の就寝までは時間があり、その時間に他の仲間達と話したりして毎日生活していた。
 それは毎日変わらず大変で退屈な生活だけど、久々に自分と同じくらいの奴と話せる時間でもあった。
 
 夜の監視役は王国海軍側が遠慮したのか少なかった。俺は遠慮は要らないと言ったけど、船長のカーンさんーーこの人、本当は王国海軍提督なんだってーーは脅威のある時代ではないと、経験をする程度で良いと言ってくれた。
 
 
 …でも、俺は結構好きだった。
 
 
 夜の海は寒いけど、ガルディアを出て魔岩窟水道を抜けた辺りからは気候が暖かくなるから、冬でも気温は20℃もある。寒いガルディアの昼より暖かい。
 
 満点の星空が俺の視界に飛び込んでくる。
 そして心地よい風と波の音。
 
 海の上での楽しみはこの時間かもしれない。
 
 
 そんな時、ふと、小さい頃のことを思い出した。
 
 
 ずっと昔、もう本当に昔。
 あれはまだ俺が3歳くらいのころだろうか、…よく覚えてない。
 でも、俺はその人の後ろ姿を覚えている気がする。
 
 彼は俺と同じ赤い髪をしていて、逞しい背中が見えていた。
 空には銀の月と赤い月があって、彼は赤い月を見ていたんだと思う。

 俺が歩いて彼の横に近づくと、その大きな手で俺の額を撫でてくれたっけ。
 俺は凄く嬉しかったけど、彼は哀しそうな眼をしていた。
 不思議そうに俺は見ていたけど、…その後の記憶がない。
 
 
 彼は俺の親父なんだろう。
 でも、ガキの頃のアルバムには親父の写真は一枚も無い。
 
 母さんに言っても、当時は貧乏でカメラが無かっただもんなぁ…。ハハ。
 でも、母さんは親父のことが好きだったんだな。
 親父のことを悪く言ったことは一度も聞いた事が無い。
 
 何故別れたのかは教えてくれないし、俺も聞くつもりは無かったけど………結婚が正式に決まった時に初めて話してくれたっけ。そして写真も。
 
 
 トントン。
 
 
「入るわよ。」
「あぁ、うん。」
 
 
 母さんはドアをゆっくり開けた。
 俺が机の椅子から後方を振り向くと、彼女はゆっくりと俺の背後へ歩み寄ってきて言った。
 
 
「いよいよ明日婚約ね。」
「うん。」
「…私はあなたに嘘を付いていたの。」
「え?」
 
 
 思い掛けない言葉に、俺は何を言っていいのか分からなかった。
 たぶん、困惑の表情が露になっていたに違いない。
 
 
「これを。」
 
 
 そう言うと、母さんは1枚の古びたモノクロ写真を俺に手渡した。
 そこには赤ん坊を抱く男の姿があった。どことなく俺に似ている。
 
 
「この人は?」
「…あなたの父さんよ。」
「…え、写真あったんだ。なんだよ勿体ぶらずに見せてくれればいいのに。」
 
 
 俺は内心驚いたけど、笑顔でそう返した。
 母さんはそんな俺の反応に微笑んだ。たぶん、不安だったんだろうな…。
 
 
「この写真は残っている本当に唯一の写真なの。まだあなたが生れて半年くらいかしら。場所は分かるでしょ?裏庭の物干し近くよ。花壇も見えるでしょ?」
「うん、一緒に住んでいたんだ?」
「えぇ。」
 
 
 写真に写るその男は横顔の鼻先程度までしか写っておらず、しかも髪も長い様だ。
 メインは飽くまで俺の為に撮った写真といった感じだが、その口元は微笑み…とても優しそうだ。
 俺を抱くその腕は逞しく、並の鍛え方では付かないだろうことが窺える。どうやら、俺の体は遺伝もあるのだろうか。はは、親父譲りは感謝しなきゃな。
 
 
「名前、聞いても良い?」
「…エイジよ。エイジ・トラシェイド。」
「エイジって言うんだ。」
「そう。あなたの名前を考えたのも彼よ。彼はとってもあなたを愛していたわ。でも…」
 
 
 その後の話は、ちょっとシンミリしちゃうから簡単に言うと、父は亡くなったらしい。
 
 母さんの話では貿易業を営んでいた父は、業務中に暴漢に襲われたそうだ。
 でも、母さんが俺を連れて墓参りに行った事は…そういえば一度も無かったな。
 
 …幸い父は俺達が二人で暮らして行けるだけの財産を持っていたらしく、遺言で俺にその財産を全て譲るってあったらしい。
 母は俺をまっすぐに育てるためにその財産を有り難く使わせてもらって、働かずに俺のそばにいてやろうって思ってたって言っていた。何より、その遺言では父もそれを望んでいたらしい。
 
 
 母さんは成長した俺を見て親父によく似てきたって言ってたっけ。
 その時の母さんは、…いつもより嬉しそうだったな。
 
 
「おい、交代だ。行って良いぜ!」
「はい、有り難うございます!」
「な〜に。気にすんな。ま、ゆっくり休め。」
「はい!では、失礼します!」
 
 
 俺はマストを降りると、まっすぐ仮眠室に向かい眠りについた。
 
 
 
 ようやく南メディーナについた頃、メディーナでは港湾建設の真っ最中で沢山の魔族の人達がいそいそと働いていた。接岸許可を求める使者として俺と副長のビリジアン・グリーン中佐と通訳のプリタさんがボートに乗って行く事になった。
 
 ボートについては昔ながらと言うわけではなく、現代のスクリューのついた動力付きとなっている。このボートはルッカ製…と言いたい所だが、王国御用達のクロト社が製造している。
 いくら長年の幼なじみで技術が凄いって訴えた所で、俺たちの力では政治は動かせない。王国御用達指定にするだけで精一杯というのが現実だった。
 
 余談だが、王国御用達の会社は他に総合貿易商社のアンダーソン商会ーーフリッツの所だなーーとか、ドーヴェン社といった企業がある。それに造船製造のクロト重工業社、ルッカの家も参加しているトルース職人組合といった所か。
 アンダーソン商会はトルースの元締めみたいな老舗で、それこそ揺りかごから墓場まで作るって感じ。沢山のトルースの会社はアンダーソン商会を窓口にして王国と取引している事が多い。
 ドーヴェンは元はパレポリ出身の会社だけど、王国とは長い付き合いらしい。その傘下がクロト重工業っだったりするけど、主に食品の流通で世界中にネットワークがあるそうだ。ちなみにトレードマークは青い二つの交差したリング。
 
 
 ボートが接岸すると、沢山の魔族が集まってきた。襲ってくるわけでもなく、ただ、恐る恐る見ている感があるけど興味も有る様だ。
 プリタさんが彼らにメディーナ語で話しかけた。そうしたら、その中の一人が何か言って走り去っていった。プリタさんの話では責任者を呼んできてくれるらしい。
 
 
 メディーナの政治体制はよくわからない。
 
 
 今はメディーナ村を中心に幾つかの集落がある程度らしいが、ガルディアと発つ前に聞いた大臣のグリーンさんの話では、見た目よりまとまっていて文化水準は高いらしいということだった。…それがどういう意味なのかはこの時点ではわからなかったけど。
 
 責任者の人が来てからは、すぐに接岸の許可が降りて積荷の荷下ろしが始まった。
 俺はといえば、…やっぱりここでも下っ端なわけで、積み込まれた荷物の荷下ろしをすることになった。乗り始めた頃とは違ってもうみんなとは完璧に打ち解けていて、最初の頃と比べたらずっと楽だった。
 積み降ろしを終えたら、俺は外交任務にかり出される。
 …なんだかんだと言いながら、俺も一応王族らしい。
 
 俺達はカーン提督を中心に、プリタさんと俺、他に護衛として紅一点って言うのかな?男ばっかの中に数少ない女性ーーしかも、かなりの美人!ーーのシャール少佐と、ちょっと頼り無さげだけど、銃の腕に定評のあるカルマ大尉がついた。
 …この二人、船倉の仲間の話だと出来ているらしいが、これは公然の秘密って奴?…一応、職場恋愛はご法度なので、本人達は秘密ってことらしい。
 
 俺達はメディーナの人達に連れられて南メディーナ町長さんの家に行った。家は街の中央にあり、小さな議場を併設した町並みと同じ新しい少し大きな家だった。
 町長さんはガルディア語も堪能な方で、プリタさんの活躍の場は無し。
 んでもって、とても気さくな方で、俺達の話を快く引き受けてくれた。

 というのも、今回の航海では正式な定期船契約を、この南メディーナとも締結する事が目的となっていた。パレポリとの貿易競争も激化している現状で、いつまでもメディーナとの間に外交問題を抱え続ける事は得策ではない。
 
 ま、親父様直々のご命令と有れば、行かないわけにはいかないわけだ。
 
 って、いつの間にか俺って面倒な政界に組み込まれちまったなぁ。へへ。
 毎日毎日、そりゃ呆れるくらい花婿修行だもんな。…はぁ。
 でも、事この辺に関してのマールの手際は凄い。…さすがはお姫様って奴かな。
 いつもはのほほんと天然入ってるのに、要人との会談とかはあっさりこなしちまう。
 …俺なんて、今でも礼儀作法だのって気になって、内心では緊張しまくるのにさ。
 
 
「それは良いお話です。私どももトルースとの定期船は大歓迎です。この南メディーナはメディーナの玄関口として、我々も国際的に交流を深めようと思う意思の表明も込めた街です。今回は殿下御自らのおこしを大変光栄に思っております。」
 
 
 町長さんはそういうと、目を細めてにっこりと微笑んだ。
 彼はジャリー族、人間との違いは殆どない。有るのは微弱な魔力程度。魔族の中でもっとも多くの人口を占めると言われている。見た目は青とか緑とか茶色で驚いたりするんだけど、実際の人当たりは普通の人って感じだろうか。
 
 この任務は一応俺の仕事ってことになっていて、交渉は全て俺に任されている。勿論、提督や少佐や大尉も補佐してくれるということになっているけど、事務手続き以外は俺がすることが義務って奴かな。
 ま、さっきも言った様に、思っていたよりずっと気さくな方だったから、本当にトントン拍子に決まってしまって、この辺は町長さんに感謝ってところか?
 
 
「様々な配慮に痛み入ります、町長殿。では、我が方の手続きについては、カーン提督より文書の署名及び交換と言う形でかえさせて頂きたい。よろしいですか。」
「それはもう。では、用意させましょう。」
 
 
 あ、おかしいって思う奴がいるかもしれないけど、俺がサインをしなかったのはまだその権限が無いから。だってさ、俺ってみんなには「殿下!殿下!」って呼ばれていても、まだ本当に殿下ってわけではないんだ。
 …一応公爵位は与えられているけど、外交の全権代表者はあくまで提督。
 …ま、当然だよな。
 
 その後、無事に契約も締結が済み、滞り無く目的の日程は終了した。
 その帰り道…
 
 
殿下、本日はとても良い姿勢でした。このカーン、安心してお任せできました。」
 
 
 提督はそういうと目を細めて微笑んだ。
 俺はその後ろで頭を書きながら、
 
 
「いやぁ、内心ガクガクでした。でも、この契約の成立でガルディアは安泰ですね。」
 
 
 俺の楽観的な言葉に、提督は意外にも曇った表情になった。
 
 
「…だと、良いのですが。ふぅ、前途多難ですな。議会は陛下のご意向を理解していないし、民心も現実を見ていない。…我が国は、どうやら随分と平和を謳歌し過ぎた様ですな。」
 
 
 提督の声はとても気落ちしていた。
 契約は成立したと言うのに、何をそんなに危惧するんだろう。
 幾らパレポリに追われている競争ったって、それも経済でのこと。
 …なのに彼の声は深く沈んでいた。
 
 俺はなんて言ってやれば良いのだろう。
 …王族といっても、俺には政治がわからない。
 
 
「…提督、武器で争うわけではありません。経済ならば良いではないですか。」
 
 
 これは俺の正直な感想。
 だってよ、なんで商売競争しているのに戦争が関係するんだ?
 
 親父様は確かに提督の言う様に言っていたけど、まだ実際に酷い何かが起こったわけでもないんだぜ?
 そりゃよぉ、言ってる事は分かる気がする。でもさ、俺達に権限が無いのは仕方ない。
 
 王様だからって何でも許されていたら、それこそ変な奴が出てきたらひでぇことになる。
 それって学校の先生も時代の流れって言ってたぜ?…いつまでも王権にしがみついていられるわけじゃないし、国の人達も王家に頼りっきりって訳ではないしさ。

 それに、パレポリが出てこようと、メディーナが出てこようと良いじゃん?
 未来ではさ、ガルディアは勿論、パレポリも何も無かったんだしさ。きっと、いつかどっかで王国に頼らない時代がくるんだと思う。王国がみんな独り占めって時代は、…いつかは終わるんだろうな。
 
 ま、俺は別に提督に反発したい訳じゃないぜ。
 たださ、そのまま引くのもなんか腑に落ちないしさ。
 やっぱ男としては、売られた喧嘩は買うみたいな。…え?違う???
 
 …でも、提督は、
 …俺の予想に反して素直に俺に同意した。
 
 
「…ですな。申し訳有りません。殿下。お忘れ下さい。」
 
 
 …なんでだよ。
 
 
 提督は真面目にこの問題が深刻だと感じているんだろ?
 それなのに王族だからって俺に遠慮することなのかよ?
 
 
 …俺よりずっと政治や世界を知っているこの人がこんだけ深刻に悩んでいる。
 でも、そんな人の言葉も曲げちまう王族って何だ?
 …そんなんで良いのかよ。
 
 
いえ、違う!違うでしょう!…提督のお考えに間違いはありません!俺、いや、私は!王族として何ができるのでしょう。
 
 
 提督は立ち止まり、突然俺の方を振り向いた。
 その表情はとても厳しく、鋭い視線を俺の目に定めていた。
 俺は思わず息を飲んだ。
 
 
「…殿下、あなたはこれからのガルディアを背負う姫の夫です。どんなことがあっても、姫を支え、そして、ガルディアを共に導いて下さい。この国に万が一のことがあれば、議会は止まり、軍の指揮も全てが止まるでしょう。…それでは遅いのです。」
「…どう、しろと?」
 
 
 彼はぴったりと俺の目に視線を合わせたまま、その厳しい目をそらさずに言った。
 
 
「万が一の時が来たら、両殿下が国であり、全ての指揮を取ることとなります。どうか命を大切になさってください。我々はそのために存在している事を…お忘れなく。」
「…それは、俺にみんなの命を使えと?
「…君子たるもの、臣下の命を預かり導くのが勤め。それが王の道でございます。」
 
 
 重い。重すぎる。
 なんで、俺はこんな重いものを背負わないといけないんだ。
 でも、同時にこれがマールの背負うものなんだよな。
 
 
 …辛いな。
 …あいつ、いつも笑ってるけど…こっそり泣いてるし。
 
 
「…そう、ですか。」
 
 
 そこに、後方から突然シャールさんが俺にやさしく話しかけた。
 …正直、あのタイミングは嬉しかった。
 
 
「私は死にたく有りませんわ。
 提督も殿下も、勝手に殺さないで下さいね。」

「はっはっは、そうだな。君の言う通りだ。失礼。」
 
 
 提督はシャールさんの言葉を聞いて、にっこりと笑った。
 俺も気が抜けて、空笑いしちゃったっけ。
 
 
 その後無事に船に戻ったら、もう王族はおしまい。
 また船倉での下っ端に戻るわけだけど、寝る前にさっきのことが思い出された。
 
 
 …提督の言葉は、親父様も本当に深刻に考えている。
 
 
 千年祭の後に一方的に独立を宣言したパレポリ。
 軍事的に日増しに強くなっているって言っていたっけ。
 
 この平和な時代に、彼らはなぜ武器を持つと言うのだろう。
 勿論、海上貿易は昔から海賊の被害が多い。…この前も船が襲われたって聞いたし。
 だから、過去の時代から海運業には私設の兵力が用いられたらしい。
 
 でも、何故今なんだ?
 
 こんなに平和で平等なのに、何に不満があって国を作ったんだろう。
 政治はわからないけど、生活してるんだから…今自分が住んでいる国が、少なくともおかしくはないと思っている。
 でも、国が欲しいって…、ガルディアでは不満なんだよな。
 
 
 そして、俺は人の命を犠牲にしてまで生き残らないといけないのかな。
 マールはそうかもしれない。
 
 
 …でも、俺は違う。
 
 
 元は一介の平民で、どう見たってただの無知な男。
 政治もしらなければ、人だって知らねぇ。
 そんな奴のために命を振り回される権利ってあるのか?
 
 そもそも、提督は本気で俺に命なんて預けるのか?
 シャールさんだって言っていたじゃないか。
 死にたい奴なんていない。誰だって生きたいんだ。
 
 
 …勿論、俺だって。
 
 
 その夜は色々考えているうちに、いつの間にか眠っていた。
 
 
…翌日
 
 
「…おい、起きろ!」
「ん?う〜ん。」
 
 
 くそぉ、もう少し寝かせてくれよ。
 今日は非番だろぉ。
 
 
「カルマ大尉が来てるぞ!」
「え!?」
 
 
 やばいやばい、昨日の王族気分が抜けきれてなかった。
 俺は慌てた。
 今の下っ端の俺からしたら、大尉ったらめっちゃ階級上じゃん!
 すぐに着替えると、俺は戸口に出て敬礼した。
 カルマ大尉は気怠そうに礼を返すと、これまた気怠そうに言った。
 
 
「あぁー、えーと、君、今日から船倉じゃなくて甲板勤務ね。」
え?
「いや、俺も眠いから手短に言うけど、操舵とか勉強してもらわないとね。というわけで、今日からは俺と同じ待遇なんでよろしく。」
「え?は、はい!宜しくお願いします!
 
 
 俺は驚いたけど、確かにずっと倉庫暮らしじゃ変だよなと思った。
 大尉はそういうと士官クラスの制服を一式俺に渡して去って行った。
 そこに、船倉の仲間達が俺を祝福し始めた。
 
 
「おめでとうございます!殿下!」
「え、おい、殿下はやめてくれよ。仲間だろ?」
「殿下、下々の事はお忘れ下さい。今から私たちは貴方の部下です。」
「おい、そんな…。俺、部下なんて思わないからな!」
「了解しました。」
 
 
 なんだよ、なんだよ。朝からこれは。
 …幾ら何でも突然過ぎるだろ。
 
 
 でも、確かにあいつらの言う通り、俺もそういわれりゃそうだよ。
 猫被って、役になりきって、みんなに溶け込んでみて。
 突然変わらないで!…もないか。はぁ。
 
 
 あぁ、すっげーマールの気持ちがわかる。
 こういうことなんだよな。
 
 
 俺はその後、士官服に着替えてから船長室を訪ねた。
 というのも、カルマ大尉から全く部屋の指示とかなかったから。
 …あの人は本当にいい加減な人だなぁと、今更ながら感じる。
 
 俺は船長室の前に立った。そこには二人の衛兵がついていた。
 二人は俺を見ると敬礼をした。俺はそれに答えるとノックをした。
 
 
 コンコン
 
 
「入りなさい。」
「は!」
 
 
 中に入ってからは、お決まりの名乗って敬礼というフルコースを一通りやった。
 提督は楽にしたまえとラフに俺の名前を呼んで応接椅子に移動した。
 そして、彼は俺に酒は大丈夫かと聞くと、ブランデーをロックで用意した。
 
 
「朝からこんなものと思うかもしれないが、なかなかに効いてねぇ、若い頃は低血圧に苦しんだから、こういう酒も少量ならば良いものだよ。」
「は、お気遣い下さり、有り難うございます。」
「しかし、制服がよくお似合いだ。さすがは殿下ですな。」
 
 
 そう言うと提督は目を細めて喜んだ。
 俺は照れたが、用件を伝えた。
  
 提督は部屋を自分の部屋の隣に用意し、さながら副長のような扱いだ。
 突然大尉になったかと思えば、突然副長待遇。…わからない。
 
 
「これからは通信技術や様々な先端航海技術についてもお勉強して頂きます。帆船操舵技術は勿論、我々は殿下が海軍提督として船を動かせるだけの技術力を習得して頂くために、今後は任務を遂行して行きますので、勉学に励んで下さい。」
「は!精進致します。」
「では、本日は非番でしたね。ゆっくりお休みになられて、明日から頑張りましょう。」
 
 
 部屋を出てからすぐに新しい自分の部屋に入った。そこは元々副長室だったはずなんだけど、どうやらグリーンさんは元からこの部屋ではなかったらしい。
 綺麗な飾り窓がついた、さすがに格式あるこの帆船ガルディア号だけある。
 …普通はこんな所なんて入れないよな。…へへ。

 ま、役得と言うべきか、こんな事でもないと入れない場所だけに………やっぱ嬉しい。

 
あーーー、ったく、…早く会いてぇなぁ。」
 
 
 俺は急に彼女に会いたくなった。
 もう一ヶ月半か。
 
 
…翌日。
 
 
 さっそく海軍士官演習となった。
 今日からは食事が自室に運ばれる様になり、甲板の掃除も何もすることがなくなった。
 これまで毎日規則正しく生活してきたこともあり、意外にも馬鹿みたいに早起きしてしまった。…こんなことをマールが知ったら、きっと目を丸くするんだろうな。はは。
 
 話は食事前、俺は着替えて甲板に出ることにした。
 士官服に袖を通すのは………なんだか慣れないけど。
 
 既に廊下も甲板も沢山の下士官が掃除をしていた。
 朝一番の掃除が毎日の日課。
 …俺も昨日まではここで掃除をしていた。
 
 俺が廊下を通ると、ぴっと作業をやめて立ち上がり敬礼する。
 …昨日までの俺の姿だけど、なんか変だよな。
 
 俺は立ち止まって思わず言ったよ。
 
 
いい。なおってくれ。俺もみんなと同じだ。軍規はある、…でも、不必要な礼まで要求するつもりはない。」
 
 
 でも俺がそう言った時、後ろからその言葉に反論が出た。
 
 
…そうね。私も一部認めてあげる。でも、規律を一つ緩めたら、どこまでもなし崩し的に壊れて行く。それでいいわけ?」
 
 
 その声は少佐の声だった。
 彼女は後方からこつこつと靴音を立てて俺の前に進むと、そのまま振り向かず立ち止まった。
 
 
「朝早いんだな。…確かにそうかも知れない。でも、それは俺が受け止める責務なんだろ?なら、それは受け止めるしかないさ。そう決めたんだから。」
「…そう。なら、受け止めるのね。でも、肝心な時に動かない組織で、本当に民を守れるのかしら。日頃の行い無くして必要な時は動かない。あなただって、今でも戸惑っているんでしょ?…付け焼き刃の殿下。」
 
 
 確かに、彼女の言う通りかもしれない。
 俺は王族である事が付け焼き刃であることを否めない。
 
 
「少佐、…確かに俺は元からの王族じゃない。でも、少なくとも努力はしている。そして、ここにいるみんなも努力して勝ち残ってきたんだ。…勿論規律は必要だ。でも、付け焼き刃と切り捨てるのもどうかと思う。それに、貴方もいるだろ。」
「私が…?」
「そう。俺が緩めても、結局は他のみんながトータルで規律をつけちゃうんだろ?それとも、貴方も緩めるの?」
 
 
 少佐は少し横を振り向いて後方の俺を見ると、僅かに微笑んで言った。
 
 
「…そうね。私はしない。あなたの勝ちで良いわ。でも、丸投げはダメよ。殿下。
「はは、あぁ。」
 
 
 彼女はそういってそのまま去るかと思ったが、意外な言葉をかけてきた。
 
 
「そうそう、朝早いのはね、この時間の風が好きだから当たりに行くのよ。どう?」
 
 
 俺の返事は決まっている。
 …断る理由も無いだろ?
 
 
「はい、少佐。では、お言葉に甘えて。」
 
 
 俺は少佐の後方をついて行った。
 彼女の歩くのを後ろから見ていると、…格好良い。
 
 彼女の歩く先で次々に下士官が作業をやめて敬礼をする。
 後方で見ていると、これがまた…格好良いんだよな。
 
 甲板も既に沢山の下士官が掃除をしていた。
 彼女はその中をぬって、船首の方へ。
 
 進むたびに風が彼女のブラウンの髪を揺らす。
 朝日の光で髪が透き通りキラキラと輝いている。
 
 
「朝はいつもこんなに綺麗だとは限らない。でも、不思議ね。光はあるの。どんなに闇が帳を降ろしても。」
 
 
 彼女の言いたい事がよくわからない。
 でも、確かに陽はまた上る。
 俺が黙って彼女の横に立つと、彼女は俺を見るわけでもなく朝日を見ていた。
 そんな彼女に、ちょっと悪戯心が起こった。
 
 
「…カルマさんとはいつご結婚されるんですか?」
 
 
 しかし、意外にも俺の期待とは違い、彼女は俺の唐突な質問にも表情を変えず冷静に答えた。
 
 
「殿下も野暮な事聞くじゃない。そうね、彼、物臭で奥手だけど…近いうちに結婚出来たら良いなぁ。…なんて。本当は私もわからないわ。」
「何故?」
「殿下こそ、いつご結婚されるんです?」
「そ、それは、…はは、俺一人じゃ決められないんだよな。」
 
 
 俺は苦笑するしか無かった。
 自分の結婚式すら決められないのに、他人の色恋もない。
 でも、彼女はそんな俺に微笑んで言った。
 
 
「私も同じ。ううん、私自身もわからない。いざ言われてみるとね…独身も良いかなぁって?フフ。我が侭よね。」
「もう、プロポーズ…受けてたんですね。」
「えぇ、あなたはしたの?」
「…一応。」
「そう。じゃ、それ以上は聞かないわ。」
「…有り難うございます。」
「でも、大変ね。彼女きついでしょ?」
「ははは。いや、可愛い所ありますって。」
「私みたいに?」
「なんですかそれ?」
「そーよね。こんな年増女よりは、年下の彼女よね。」
「いや、そ、そんな。」
 
 
 終始彼女のペース。
 はは、でも、楽しかったこんな時間もカルマさんの事を考えると後が恐いし、俺はこの時間にここへ来る事はやめることにした。
 
 さて、朝食の時間だ。
 俺は最初分からなくて食堂へ行ったんだけど、俺の分は自室へ運んでくれるそうで、結局また俺は自分の部屋へ戻った。
 そして、来た食事を見て驚いた。
 
 船倉時の飯とは違い、確かに同じものには違いないけど、なんか見た目が違う気がする。
 使っている皿が王室御用達の陶器製で、ご丁寧に紋章までついている始末。
 …さすがにこの差は無いよなと思ったけど、まぁ、一応これも有りかと思うしか…ないよな。
 
 
 その日は食事のあと初めて操舵輪も回し、大砲の発砲の演習までやった。
 帆の傾け方や張り具合なども一通りやったけど、やっぱここら辺は「演習やったぜ!」って思える瞬間があった。
 
 
 これからのあと半月は、この演習を中心に講義が行われた。
 中でもトルース湾に入った辺りで行われた海軍指揮演習は、他の最新鋭艦も交えた陣形の布陣の仕方とか、本格的な軍事演習だった。
 最近のガルディアではこの演習は30年ぶりということもあって、見物客も沢山いたそうだ。
 後から聞いた話では、王室の人達もみんな見ていたって言ってた。…なんか恥ずかしいぜ。
 
 
 無事に終わった演習の後、ようやく船はトルース港へ入港し接岸した。
 そこには沢山の船員の家族が詰めかけていて、みんな大声で帰還を祝福してくれている。
 俺は来た時とは違って上級士官として提督の横で敬礼した。
 その時、マールが来ていないか見ていたんだけど、どうやら来ていないみたいだ。
 
 
 とっても残念だった。
 …早く顔が見たい。
 
 
 そう思っていたその時、ふとまぶしい光が目に飛び込んできて思わず目をつぶった。
 そして、恐る恐る目を開いて差し込んだ方角を見ると、…いたいた。
 港の丘の上にある展望公園に彼女らしい姿を認めた。俺は思わず笑みがこぼれそうになったけど、必死に耐えて敬礼していた。
 
 船を降りる時、直々に親父様が出迎えにきていた。
 赤い絨毯が敷かれると、俺が一番始めに降りることになった。
 
 まずは提督と握手を交わし敬礼をした後、ゆっくりと桟橋に立つ。
 すると楽隊がファンファーレを鳴らした。
 
 俺はその音を聴いてから歩き始める。
 ゆっくりと、ゆっくりと。
 沢山の人の声援が送られる中、目線は一点、親父様。
 
 厳しい表情の親父様に緊張で内心ガチガチな俺だけど、しっかりと落ち着いて彼の元で止まって敬礼した。
 
 
「陛下、只今、任務から帰還致しました!」
「うむ、ご苦労であった。よく耐えたな。マールディアも待っている。ゆっくり休みなさい。」
「は!」
 
 
 その後は親父様と凱旋パレード。
 …正直さっさと終わってマールの所に行きたい気持ちでいっぱいだった。
 でも、結局終わったのは夕方の日が暮れ始めた頃だった。
 俺は士官服も着替えずにそのまま必死であの場所へ駆けた。
 
 
 きっといるに違いない。あの場所に。
 あの丘の公園は、トルース湾が一望出来るマールのお気に入りの場所の一つ。
 そして、俺がプロポーズの言葉を言った場所。
 
 
 思った通り彼女はそこにいた。
 彼女の髪が夕日に照らされてキラキラと黄金に輝き、潮風がさらさらとなびかせている。
 待ってたぜ、俺の女神。
 
 
「マール。」
 
 
 彼女が振り向く。
 そして一言。
 
 
「遅い。」
 
 
 表情が重い。目が血走ってる。
 眉間に皺が寄ってるし、青筋立ってるし…。
 俺はあわてて謝った。
 
 
「ごめん!もっと早く出たかったんだけど!親父様に捕まって………いや、マジで、ごめん!」
「いいよ。分かってるから。」
 
 
 そういうと彼女は俺のもとに近づいてきて、そのまま無言で俺の胸に抱きついた。
 
 
「お帰り。」
「…ただいま。」
 
 
 航海日誌「帆船操舵演習」終わり。
 
 

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