クロノプロジェクト正式連載版シーズン2
 

第119話「変化」(CPss2第35話)
 
 
 クロノ達は洞窟の奥深くの空洞に来ていた。
 そこでシズクが火を放ち明かりを灯すと、貰った呪印球を一つ取り出した。
 シズクの取り出したのは水の呪印だった。
 
 
「呪印を変えるということは、たぶん、今出ている属性を相殺する魔力を注入し、相殺した後で欲しい呪印の魔力を注ぎ込めば変化するんじゃないかしら。…試しにまずはこの水の呪印を火の呪印に変えてみるわね。」
 
 
 シズクはそう言うと呪印を左の手のひらに置いた。そして、そこに右手で魔力を注ぎ始めた。すると、水の呪印が火の呪印の様な橙色のマーブルが入った模様を浮かべて変化し始めた。彼女はそのまま魔力を注ぎ続ける。
 
 
「あ、変わった!」
 
 
 予想通り水の呪印の刻印が火の呪印の刻印に変化した。
 それは紛れも無い、橙色の火の呪印球だった。
 
 
「……マジだな。ってことは、地の呪印は天の魔力を注いで行けば天の呪印か!俺、やってみるぜ!貸してくれ!」
 
 
 クロノが目を輝かせて右手を差し出した。
 シズクが笑って地の呪印を彼の掌の上に置いた。
 彼は左手をかざすと、魔力を注ぎ始める。すると、水の呪印の時と同様に地の呪印に天の呪印の様な白く透き通ったマーブルが入り始めた。
 
 
「行け行け行け!!!おーしおしおし!!キタァーーーーーーー!!!」
 
 
 彼の歓喜の叫び通り、地の呪印は見事に天の呪印に変化した。
 これで属性のある呪印は全て揃った。だが、最後の一つ、冥の呪印を作らなくてはならない。
 
 
「あのよぉ、冥ってどうやって作るんだ?」
「う〜ん、単純にとりあえず属性を打ち消した状態が冥よね。まぁ、地の呪印でまず中和してみたら良いんじゃないかしら?」
「オッケー!」
 
 
 シズクはそういうと、もう一つの地の呪印球を彼の手に乗せた。
 クロノは魔力をそっと込め始めた。
 ゆっくりと魔力が注ぎ込まれ、マーブル状の模様が浮かび始める。それは次第に明るい色に変わり始めた。そして、
 
 
「あ、天に変わっちゃったじゃない!注ぎ過ぎよ!!!」
「あ、わりぃー、仕方ない。ここはミネルバさんの出番だな。」
「わかりました。こちらへ。」
 
 
 ミネルバが左手を差し出した。
 頭をポリポリ掻きながら、クロノはミネルバに呪印球を手渡した。
 それを受け取ると、彼女はゆっくりと地の魔力を込め始めた。天の呪印球はゆっくりと黒いマーブルが入り始める。だが、また込め過ぎてしまったのか地の呪印に変化してしまった。
 
 
「あれ、そんなに込めていないはずなんですが…ごめんなさい。」
「っかしぃなぁ。…もしかして、冥は作れないじゃないか?」
「ちょっと貸してみて、私がやってみる。」
 
 
 シズクはミネルバから呪印球を受け取ると、今度は彼女がゆっくりと時間を掛けて天の魔力を注ぎ始めた。それはとてもゆっくりと確認するように込められた。だが、またしても地の呪印は、冥という刻印は一瞬たりと出ずに天の呪印に変わってしまった。
 
 
「…う〜ん、どうしてだろう。これは元から冥の変化はやっぱり無いみたいね。」
 
 
 その時、ミネルバが言った。
 
 
「あの、もしかしたらですけど、冥の呪印球は4つの呪印球が集らないと作れないんじゃないかしら…?」
「…そうかもしれないわね。ってことは、ハイド達も私達を必要としているってことになるわね。」
「…その通りだよ。」
 
 
 その声は3人の背後の入り口から聞こえた。
 そこには彼らの話していたハイド達、コア・ガードチームの3人の姿が有った。
 
 
「…あら、随分とタイミング良いわね。」
「ははは、皮肉屋だなぁ。シズクさん。」
 
 
 ハイドが微笑んだ。
 シズクはプイと顔をそらす。
 そんな彼女に苦笑しつつ、横からクロノが言った。
 
 
「どうやら、君達と戦わないとクリア出来ないみたいだな。」
「そうなりますね。ただ、僕は予想外でした。本当はファイアブラストかメーガスと戦ってクリアかなと思っていたから、ここであなた方と戦う事になるとは思っていませんでしたよ。」
「あぁ、俺達もこんなにてこずるとは思ってなかったぜ。ははは、でも、お陰で色々とここの事が分かってきた気がするぜ。」
「…そうですか。さて、長話は不要でしょう。ここは決着をつけるべき時です。」
 
 クロノはハイドが杖を強く握りしめるのを見逃さなかった。
 
「そうだな。」
「あなたは強い。だから、僕らは全力で戦わせて頂きます!」
「あぁ、望むところだ!!!」
 
 
 両者一斉に構えた。

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