クロノプロジェクト正式連載版シーズン2
 

第104話「天国と地獄」(CPss2第20話)
 
 
 の呪印への道を進み始めたクロノ達3人は、呪印のフィールドが近づくにつれて前方から光が見え始めた。天の呪印の間への道は前方から光を放っており、空間認識に視覚が徐々に戻り始める。3人は視覚があることに安堵しながら進んでいると、前方でプラズマ放電らしきものが無数に走っているのが見えてきた。
 
 
「あれって、…やっぱり天のフィールドのせいよねぇ。」
「だな。」
 
 
 シズクの言葉にクロノも苦りながら同意する。
 ミネルバは落ち着いて前方を見て立ち止まると、プラズマ放電に向けてウォーターを放つ。
 
 彼女のウォーターの水球は宙をふよふよ浮いて進むと、徐々に放電している電気を吸収し帯電させ始めた。彼女はそれを確認すると、ウォーターの出力を上げてどんどん吸い上げる。彼女の考えた方法は上手く行くように思えた。しかし、電気エネルギーを次々に帯電させてゆくウォーター内部の電力は莫大なものとなり始めていた。その力は次第にウォーターの呪縛の許容量を超え、魔力の流れを伝ってミネルバにも襲い始める。
 だが、彼女はそれも見越していた。
 もう片方の腕を伸ばすと、彼女は地の魔力を集中する。そして、無数の砂粒が手のひらから水球へ向けて放たれた。
 砂は帯電する水を吸収すると、周囲の壁に拡散して吸着した。
 プラズマ放電は見事にアースされ、その場から消え去った。
 
 
「ミネルバさん、お見事!」
「さすが、ミネルバさん!」
「フフ、私も少しくらい良いところ見せないとね。」
 
 
 彼女の見事な活躍で開かれた道を進む三人。
 彼らは遂に光溢れる前方の呪印の間に辿り着いた。
 
 入った途端、視界があまりの眩しさにホワイトアウトしてしまうほど、そこは光でいっぱいだった。徐々に戻り出した視界の先には今までの部屋とはまるで違う空間がそこに展開されていた。
 全体は今までとは全く違う高さのホールになっており、白い壁全ての壁面に空と雲が描かれ、そこはまるで天国の様な雰囲気だった。
 
 
「何、ここ…、どうしてここだけ装飾が立派なわけ。」
 
 
 シズクの疑問はもっともだったが、それよりももっと厄介な問題があった。
 後方の扉が閉まる音がする。
 すると、同時に空間に複数の気配が現れた。
 
「待っていたわ!ゴルァアアアア!!!!」
「一緒に戦うゲロ」
「なんだ、君達か。」
 
 なんと、そこに現れたのは、奇妙なマッスル男3人組の乙子組、蛙族のチームであるフロノ・ノ・コリガー、そして、列車で同室だった少年と青年に少女が加わった腐れ縁チームが居た。
 
 
「もしかして、あんた達…負けたのね。」
 
 
 シズクのズバリな指摘に、3チームが一斉に反発する。
 
 
「そんなん、ズバリ言われたら、恥ずかしくてお嫁に行けないわ!ゴルァアアアア!!!」
「悪いかゲロー!!」
「…。」
 
 
 3人は彼ら3チームと否応なく共に戦わなくてはならない現実を複雑な心境で見ていた。そんな中、シズクが3チームに話しかける。
 
 
「ねぇ、とりあえずは共同戦線よ。分かってるわね!」
 
 
 彼女の問い掛けに3チームは同意した。
 そんな彼らのやり取りをしている間に、中央の台座が輝く。そして、黄金に光輝く光球が空へ舞い上がると、その光は黄金の羽をまき散らして拡散し、光球のあった宙を舞う一羽の鳥がいた。
 その鳥は輝く長い尾を持ち、黄金の羽毛に覆われた見事なクジャクだった。
 エンジェルバードが問い掛ける。その声は美しく透き通るような若い女性の声だった。
 
 
「私は天上人に仕えし者。人はエンジェルバードと呼びます。私に挑戦すると言うあなた方の力を、見て差し上げましょう。もし、私に勝てたならば、あなた方の力を認め、私の力を授けます。さぁ、どなたから始めるのですか?」
 
 
 エンジェルバードの問い掛けに、シズクが元気よく言った。
 
 
「全員よ!!!!」
 
 
 彼女の言葉に、他の3チームのメンバーは一斉に苦り顔になった。
 
 
「まじなのーーーー!?!」
「そ、そこは、普通1チームずつとかいうゲロよ?」
 
 
 そんな彼らの反発を他所に、シズクは勿論、クロノ達も臨戦態勢だった。
 それを見て渋々3チームもエンジェルバードに向かって構えた。
 
 エンジェルバードは、下の騒ぎとは関係ないと言わんばかりに優雅に宙を漂っていた。その神々しい輝きは、見ているものを惹き込む程のオーラを放ってさえいるだろう。だが、これほどの神々しさが有ろうと、下の者たちは理解とは程遠いポジションに立っている。いくらオーラが有ろうと理解しない下の人々の存在は、彼女にとって不愉快なことだた。
 
「(…どうせ皆私のことを理解しないのです。全ては力に溺れるが人の流れ。私を理解した人々と同じように…、ならばせめて私が教えて差し上げましょう。人の限界を。)
 
 彼女はその美しい翼を大きく広げると、魔力を集中した。
 彼女の翼から無数の羽が空を舞う。それは幻想的で美しい時がまるでゆっくりと流れ行く様な優雅さを醸し出していた。誰もが目を奪われ、意識を集中するに違いない。
 だが、その優雅さは一瞬で豹変した。

「な!?」
 
 シズクが驚き反応するが追いつかない。
 エンジェルバードの羽は無数の光線となって天より振り注ぎ、全ての者へ容赦ない攻撃を仕掛けた。巨大な天のエネルギーが空間を満たし、そのフィールド効果が光線のエネルギーを増幅させる。
 
 天国は一瞬で地獄と化した。

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