クロノプロジェクト正式連載版シーズン2
 

毎度クロノプロジェクトをご覧下さいまして有り難うございます。
拙い文章ではありますが、2000年の計画開始から7年目を過ぎて、ようやく連載100話目を達成することができました。

長いなが〜〜〜〜い物語ではありますが、それでも徐々に今後も頑張って行きますので、感想とか暖かい励ましとか頂けたら有り難いです。

皆さんの中にクロノ達の未来の一つの姿として残れたら幸いです。

作者REDCOWより


第100話「揺らぎ」(CPss2第16話)
 
 
 の呪印の間に現れた新しい通路も、また闇の中。
 闇の中を進む3人。
 
 ただ、さすがにもうこの環境へは体が慣れてきた様で、感覚的に魔力を感じて空間を認識する事が出来た。それによって多くの情報が再び入ってくる。いや、これは目で見ている以上の情報量だ。特に呪印の間への道がわかることは勿論、人の動きさえも感じられることは発見といえた。目で見ていては感じられない人の動きが、魔力という力を通してある程度わかる。これに面識があれば誰が動いているかすらも特定できるかもしれない。
 だが、同時に力の限界も感じた。空間認識もこの迷路が特別に魔力を発するように出来ているからわかるのであって、これが通常の洞窟などでどの程度認識できるのかはわからなかった。それに、空間認識限界範囲感じられ、この洞窟の全体像を全て把握することは無理なようだ。ただ、それでも細かく内部の状況を感じる事が出来るようになってきていた。
 それは先程までいた呪印の間では分からなかった事だが、どうやら誰かが呪印の間にて勝負をしていると、呪印の魔力を感じる事ができないようだった。そして、呪印の間の中に入ると、逆に外部の魔力を感じる事が出来なくもなるようだった。
 何故そのような処置が施されているのかは分からないが、なにやらまだまだこの迷路には様々な謎が隠されているのかもしれない。
 
 クロノを先頭に後方を二人が歩く。
 彼は初めのうちは空間認識に集中し過ぎていてよく分からなかったが、次第に慣れと共に落ち着いた事で、今まで気にしていなかった感覚に気付く。それは、魔力は人の感情などといった人間の精神にも関係する力だけあり、僅かに後方を歩く二人の魔力の動きを感じる様になった。
 勿論、これは別に今初めて分かったわけではない。過去にも魔力自体は感じてきていた。しかし、魔力から感情の様な物を感じたのは初めてのことだった。
 今までは常に視覚や様々な五感が人を捉えて認識していたが、ここは言わば第六感のみで全てを把握しなければならない空間。故にその六感に全てを集中する。すると、今まで漠然と感じてきた魔力に人それぞれの色や形が有るように感じられ、そして、その動きは人の感情すら表しているようにも感じられる。
 二人は対照的な感情を持って歩いているようだった。
 シズクはいつもの自信たっぷりな感覚とは違い、まだこの空間に慣れていないことや視覚の喪失による不安があるのだろう…、
 
 
「おい、シズク、」
「な、何?」
「俺達はちゃんといる。安心しろ。」
「え、えぇ。って、もぅ、何その余裕!むかつくー!」
「ははは、わりぃわりぃ。」
 

 クロノに反発する言葉とは裏腹に、シズクの心の揺らぎが止まった。
 彼女からはずっと揺らぐ心が感じられた。しかし、もうこれで大丈夫だろう。
 
 そして、一方のミネルバは、シズクとは対照的に静かで穏やかな感情を感じた。
 彼女はさすがに過去にこの迷路を経験している事もあり、余裕は勿論、自信すら窺わせるほどに鋭敏で知性的なものを感じる。
 しかし、それでいて優しさがある。
 
 
「クロノさん」
「え?」
「……私の心は如何でしたか?」
「いぃ?」
 
 
 突然の問い掛けに驚くクロノ。
 あまりのズバリな言葉に、何を言って良いのか頭が真っ白になった。
 そんな彼の反応に彼女は悪戯っぽく笑うと、彼にやんわり諭すように話しかける。
 
 
「ふふふ、あまり女性を隅々まで舐める様に覗くのは感心しませんよ。」
「うぅ!?……ごめんなさい。」
「はい。良いお返事です。ふふふ。」
 
 
 二人のやりとりを聴いて、不思議そうに思うシズクが彼女に尋ねた。
 
 
「どういうこと?さっきのクロノといい、今のミネルバさんと良い。」
「それはね、魔力から心を感じ取っているからよ。」
「心?どうやって?」
 
 
 シズクは二人だけ分かって、自分が分からない事に大層不満という声だった。
 そんなシズクにミネルバは優しく答える。
 
 
「魔力には揺らぎがあります。それは人のバイオリズムに沿って魔力が揺らぐからです。そして、揺らぎは感情の起伏によって変化します。怒った時は激しく、哀しい時は静かに…そんな当たり前に私達が持っている感情は、魔力にも表れるんです。」
「…揺らぎ…?」
 
 
 シズクが二人の魔力に集中する。
 すると、先程までは空間を把握する為に全神経を集中していたために分からなかったが、確かに二人の魔力には揺らぎがあり、そのパターンは一定ではなかった。
 
 
「…なんとなくだけど…そうね、そう言われれば…そうなの…かな???」
 
 
 まだ半信半疑なシズクではあったが、仮にそうであったとすれば、先程のクロノの言葉にも納得がいった。何よりクロノは自分のことを心配して声を掛けてくれた…ちょっと嬉しかった。
 
 
「そ、そろそろ火の呪印が近いよ。」
 
 
 シズクは赤面していることを紛らわすかのように言った。実際に見えないのだから分かるはずが無いのに、思わずそうしないではいられなかった。
 二人はシズクの可愛い反応に微笑みを浮かべながら、火の呪印への道を歩いた。

 3人は集めやすい呪印から集めることにしていた。
 彼らのいた場所から比較的近くて集めやすいと思われるのは地と火だが、火の方が使い手もいることから難易度は低く感じられた。
 特に地の場合は地の術を無効化するフィールドを張れる術士が一人もいないため、先に火を取っておいてから地を回った方がロスが少ないと思われた。
 
 火の呪印の間が近づくにつれて徐々に空間に熱が帯び始めた。
 先程の水の呪印同様、どうやら呪印の間の近くの空間には呪印の持つフィールド属性効果が漏れ出している様だった。しかし、その方が魔力だけではない空間認識を得られて確実さを感じられた。
 この辺は主催者側のサービスなのだろうか…クロノはそんなことを感じつつ先を急ぐ。
 
 どんどん上がる気温。
 最初は少し肌寒いくらいの温度の迷宮だったが、今は既に摂氏30度を越え、40度を越えようとしている。だが、それでも熱は上昇する気配を見せ、当たり前といえばそれまでだが、一向に下がる気配は無い。
 
 額から落ちてくる汗を拭いながら、遂に3人は目的の火の呪印の間に出た。
 入った瞬間に後方の入り口が塞がれ、その瞬間にボウッと大きな音を立てて中央の台座から緋色の閃光を放って炎が吹き上がる。すると空間に突然視覚が戻り思わず目を覆った。
 
 気温は摂氏80度。とても普通の空間ではない。
 思わず火傷するほどに熱いが、ミネルバは即座に水のフィールドを造り、3人を熱から保護した。
 その時、突然声が上がる。
 
 
「はっはっは!待ってたぜチームポチョ!!!」
 
 
 発せられた声の主は、クロノ達のすぐ横にいた。
 なんと、どういうわけか他のチームがその場に一緒に居合わせていたのだった。

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 お読み頂きありがとうございます。
 拙い文章ですが、いかがでしたでしょうか?
 
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