クロノプロジェクト正式連載版シーズン2
 
 毎度ご覧下さっております皆様へお詫び
 
 ご覧の通りと言うか、クロノ・センターの更新もままならずこちらでの更新も連載と言いながら遅れて申し訳有りません。ここしばらくは私生活の仕事の処理など色々と山積しておりまして、サイトの更新が思うように行っておりません。ただ、この掲示板上での連載は今後も掲載を続けますので、センターのトップが更新されていなくとも、こちらの更新は出来る限り続けますので、宜しくお願いします。

第89話(CPss2第5話)「条件」
 
 
 日、クロノ達はフリッツから貰った手紙を持って再び国立研究院の門前に来ていた。
 門前にいる警備員はクロノ達に寄ってくる。
 
 
「失礼ですが、許可証または紹介状はお持ちですか?」
「許可証はないが、この手紙を貰ってきた。これでは駄目だろうか?」
 
 
 クロノはそう言うと警備員に手紙を手渡した。
 警備員は手紙を受け取ると、表のサインを見て答える。
 
 
「アンダーソン様より御紹介の方ですね?」
「あぁ。」
「確かに手紙を確認致しました。お通しするよう許可が出ておりますので、どうぞお通り下さい。」
「へ?あ、あぁ…ありがとう。」
 
 
 クロノ達はあまりに呆気無く手紙の中身も確認もせずに通してくれたので気が抜けた。門を潜り建物の入口に入ると正面にカウンターが有り、薄い桃色のスーツを着た若い女性が1人座っていた。
 
 
「ようこそ国立研究院へ。許可証はお持ちですか?」
 
 
 クロノは彼女の言葉に持ってきた手紙を渡した。受付嬢はその手紙を受け取り、サインを確認するとクロノに返した。
 
 
「確かに確認致しました。今日はどの様なご用件でお越しになりましたか?」
「ボッシュに会いたい。会えるか?」
 
 
 クロノの言葉に女性は困った様な顔をして返答した。
 
 
「申し訳有りませんが、ボッシュ所長は現在不在です。代理の者として所長に会いたい方は上級研究主任のルッコラ博士が応対しておりますので、ルッコラ博士にお取り次ぎ致します。では、応接室にご案内致しますので、こちらに。」
 
 
 そう言うと女性は立ち上がりカウンターから出ると、二人を応接室に案内した。
 応接室は入口から入って右の通路の突き当りに有り、中に入ると大きな窓から陽の光が入り、外の綺麗に手入れされた庭園が見える。
 窓の近くにテーブルとソファーが有り、二人はそこに座るよう促された。二人が座ると女性は暫くそのままお待ち下さいと言い残して、部屋を出ていった。

 二人はソファで寛いで待つことにした。
 部屋はしんと静かで、まるで時が止まったように音のしない落ち着いた空間だった。
 
 少しして先ほどの受付嬢とは違う女性が紅茶とお菓子をもって入って来た。彼女もまた薄桃色のスーツを着ていた。制服だろうか。彼女はテーブルに静かに置きにっこりと微笑んで挨拶をした。
 そんな彼女に二人は礼を言うと、女性は会釈をして部屋を静かに去って行った。
 二人は遠慮無くお菓子と茶を飲みルッコラ博士の登場を待った。しかし、数分待っても待ち人は来ない。
 

「遅いわねェ。」
「あぁ、まぁ急ぐわけじゃない。久々のゆっくりした時間だ、暇を楽しもうぜ。」
「それは良いけど、何するの?」
「そ、そうだな………しりとりでもするか?」
 
 
 シズクはクロノの意外な言葉に笑った。
 
 
「ハハハ、もう、何を言い出すかと思えば。えぇ、良いわよ!受けて立つわ!どちらから始める?」
 
 
 二人はしり取りをして暇を潰した。
 それから2時間後…
 
 
「り?またー?えー、う〜ん、無い!降参よ!もう。しかし、遅すぎるわ!どうなってるのかしら?」
「あぁ、さすがに遅すぎる。俺も疲れてきた。」
「こうなったら、こっちから出向きましょう!」
 
 
 シズクはそう言うとドアの方に歩いて行く。
 そして、ドアのノブに手をかけた時に、スピーカーがオンになって声がした。
 
 
「…遅くなりました。申し訳ない。私がボッシュ博士の代理を務めるルッコラです。」
 
 
 その声は男性で、年齢は思ったより若いだろうか。
 そんな落ち着いた声の主にシズクは憤りの声を上げる。
 
 
「キー!今頃スピーカーで!もう!」
「お怒りの御様子ですね、お嬢さん。では、私からお二人に是非受けて頂きたいお話があります。これはボッシュ博士の意志でもあるので、聴いて頂きたい。」
 
 
 二人は彼のボッシュの意志という言葉を聴いて首をかしげた。
 そんな彼らの疑問にお構いなく彼の話は続く。
 
 
「お二人にはここから東、首都メディーナより北東にある古代遺跡付近にある『試練の洞窟』に行って、試練を受けて頂きます。その試練については、お二人なら簡単でしょう。それを無事クリアした証を持ってまたおいで下さい。その時にボッシュ博士とのお話を取りなしましょう。」
「なんだと?…ボッシュと会うにはフリッツの紹介でも駄目なのか?って、伝わるわけないか。」
「いや、お二人の声は伝わっておりますよ。先程からのしりとりも、実に楽しそうに話している声が聴こえておりました。」
 
 
 ルッコラの話に二人が赤面する。
 
 
「…アンダーソン氏の紹介は承知しております。しかし、ボッシュ博士は必ず面会希望者に試練の洞窟のクリアを条件としております。これは彼と会う絶対条件なのです。」
「ここには今いないのか?」
「彼は所用で留守です。お会いしたくても今回は無理です。しかし、仮に居たとして、どんなに親しくとも彼は会わないでしょう。物事には順序がある。その順序を守れぬ相手をあなたならどう思いますか?」
「…一理ある。わかった。その試練、受けよう。」
「わかりました。では、受け付けの者に列車の切符を渡してありますので、お受け取り下さい。往復分あります。それで試練の洞窟へお向かい下さい。では、ご健闘を。」
 
 
 そう言うとスピーカーはオフになった。
 クロノが椅子から立ち上がる。
 
 
「…よし、行こう。」
 
 
 シズクは彼の物分かりの良さが不可解だった。それに、彼の言う試練というものの内容も気になった。
 
 
「本当に、受けて良かったの?」
 
 
 彼女の疑問に対して、彼の方は既に割り切っているようだ。
 
 
「なに、簡単だと言っていただろ?それさえクリアできないなら、確かに会う資格ねぇじゃん。俺は受けるぜ!」
「ん、もう!面倒なことばっかり。」
「ははは、ぼやくなよ。」
「もう、あなたと旅した時点で諦めてますよーだ!ベー!」
 
 
 シズクは舌を出してクロノに意地悪く返答した。
 クロノは笑って部屋の戸を開けて出た。その後は受付嬢から切符を貰い、早速向かうことにした。

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