クロノプロジェクト正式連載版

 お待たせしました!
 
 クロノプロジェクト・シーズン2先行公開版第一段の登場です!
 遂に動き始めるクロノ達ですが、シーズン2世界も元気に行きたいと思いつつ、二ヵ月に一度公開という方向で先行版が今回を含めて4回登場します。
 
 今回も感想など頂けたら幸いですし、読み終わった方でまだ外伝とか読んでない方は、そちらの方もお楽しみ頂ければ幸いです。
 
 では、始めましょう!シーズン2公開です。
 

第81話「樽出」(第一回シーズン2先行公開版6月号)
 
 
 海原へと航海を始めたクロノ達。
 しかし、舵も何もない樽は潮の流れを便りに、ゆっくりと静かに南下する航路を辿っていた。そして、樽の中では何もすることは無く、二人は暇つぶしに話していた。
 
 
「ブランカさんの計算で行くと、もうそろそろガルディア海を出る頃ね。」
「…そうか。」
 
 
 クロノは樽についている小さな窓から外を眺めていた。
 その表情は晴れ渡るとはほど遠く、どちらかと言えば確実に曇りがさしていた。
 彼女はそんな浮かない顔の彼の表情が気に入らないようで、少々ツンツンと尖った感情を込めて言った。
 
 
「まだ気にしているの?」
「いや、そうじゃないんだ。」
「じゃぁ、どうしたっていうの?」
 
 
 彼女は腕組みをして明らかに憤慨してみせた。
 しかし、とうの相手のクロノはといえば、それどころではないという表情だ。
 
 
「少し…その、…気持ち悪いんだ。」
 
 
 クロノはそういうと身震いした。
 シズクは彼の意外な言葉に、目を丸くして思わず吹き出した。
 
 
「うっそぉ〜〜〜〜!そうなのぉ〜!?意外ねぇ〜〜〜!」
「…嬉しがるなよ。人が苦しんでるのによぉ。…だいたい揺れが酷いんだよ。よくこんなところで平気でいられるよ。」
「あらぁ、そうやって座ってるから悪いのよ。立っていればまだ揺れはそうでもないわ。」
「そうか?」
 
 
 立ち上がるクロノ。
 …だが、彼女が言うようには…そう変わらない様な気がする。
 
 
「効かねぇぞ。」
「そう?じゃぁ、クロノの体が弱いのねぇ〜。意外な弱点見っけ!」
「面白がってるし、……うわぁあ!?!
 
 
 その時、突然激しく樽が揺れた。
 今までの波の穏やかな揺れとは違う、明らかに何かとぶつかった様な大きな揺れ。
 二人は中で激しく揺さぶられ、互いの体を頭突き合った。
 
 
「いったぁ〜い!」
「痛ぅ!?なんだぁ?」

 
 
 シズクが一つだけある窓から外を覗いた。
 すると、僅かに緊張した表情になったが、すぐにそれも消えて安堵の表情を見せる。
 
 
「ブランカさんに感謝ね。漂流は免れたようよ?」
「え、上手く拾われたのか?」
「えぇ。正しければね。」
 
 
 二人の乗った樽は船に引き上げられた。
 上の密閉された蓋がバーナーで焼き切られる。
 
 
「もう出られますよ。話は聞いております。どうぞ」
 
 
 二人は樽の中にいてもどうしようもないので外へ出た。
 船の上には貿易船の乗員と船長らしき人物が樽の前に立ち、整列していた。
 
 
「敬礼!!!」
 
 
 船長の号令が飛ぶ。
 すると即座に乗組員達は命令に従い、一斉に二人に対して敬礼をした。
 クロノは船長の目を見ると、礼を返した。
 
 
「直れ!」
 
 
 再度の号令で敬礼が解かれると、船長が二人の前に歩み出て話しかけてきた。
 
 
「お会いできて光栄にございます。殿下。」
「有り難う。だが、殿下は止してくれ。俺はただの漂流民だよ。この船は?」
「本船はメディーナ共和国貿易船カリフラワー号です。私は船長のヨーグ・ルートと申します。ようこそ、カリフラワー号へ。」
「そうか、情報は無事に伝わっていたんだな。引き上げ有難う。伝わっているだろうけど、彼女はシズク。俺の連れだ。」
 
 
 クロノの紹介にシズクが船長に会釈をして挨拶する。
 船長はにっこり微笑んでうなずいた。
 そこに再びクロノが彼に尋ねる。
 
 
「この船の行き先は何処へ向かっているんだ?」
「現在チョラス自治共和国へ向かっております。」
「チョラス?パレポリへは向かわないのか?」
「残念ながら直行は致しません。ですが、チョラス港からは首都グスマンまで定期船が出ております。そちらを利用されれば入れます。」
「グスマン?」
 
 
 クロノは聞き慣れない言葉に目をぱちくりさせた。
 船長は優しくそれに答える。
 
 
「旧パレポリ町は現在グスマンと呼ばれております。御存じではありませんでしたか?」
「あぁ、すまない。そうか。ありがとう。」
「いえ。本船のチョラスへの到着予定は3ヶ月後、それまでは我々が用意しましたお部屋でお寛ぎ下さい。」
「有り難う。」
 
 
 二人は船員の案内で船室の一つに案内された。
 
 
「こちらがお二人の部屋です。御自由にお使い下さい。何かありましたら誰でも良いので仰って下さい。では。」
 
 
 船員は笑顔でそう告げると部屋を出て行った。
 ドアを閉めた後、二人は同時に大きくため息を吐いた。
 
 
「ふぅ、樽は辛かったぜ。やっぱ船はでっかい奴だよな。こういうのは大丈夫なんだよ。」
「フフフ、さすがに大きな貿易船だけあるわね。揺れないわ。」
「救われたよ。…生きた心地しなかったからなぁ。」
 
 
 シズクが窓の外を見た。
 外の様子は黒い雲が立ちこめ始めていた。
 
 
「今夜は荒れそうね。」
「あぁ。」
 
 
 
 その頃ブリッジでは…
 
 
 
「船長、中海(ミドルシー)エリアに入りました。」
 
 
 船長は時計と方位を確認すると全員に向かって命令する。
 
 
「天候確認。警戒態勢に移りなさい。」
 
 
 命令後、すぐに乗組員達が動く。
 船は警戒態勢に入ると船内が慌ただしく動き始める。
 そして、すぐに天候の報告が入った。
 
 
「目視確認。前方視界周囲140度、急速に天候悪化、波の高さ最大2、5m上昇、嵐になる可能性大。」
「むぅ、左舷方向に転回、危険海域を回避。」
「ラジャー!」
 
 
 船が雲行きの荒い海域を避けて転回を始める。
 すると…
 
 
「(そーはいかないもんね〜〜〜〜!)」
 
 
 …海中で怪しい物体がそう呟いていた。
 
 
 
 船室のクロノ達は急に船が揺れ始めて驚いていた。
 

「うおぅ、うぷ。…ど、どうなってんだ?」
 
 
 折角船酔いが治まったと思っていた時に再度の揺れが起こり、クロノの表情は重い。
 シズクは窓の外を不思議そうに見ている。
 
 
「…おかしいわ。」
「何が?」
「…船は悪天候の海域を避けたはずなのに、急速に雲行きが悪くなってる。」
「え?…そうか。と、とにかく…上へ上がろう。」
 
 
 二人はブリッジへ向かった。
 船の通路ではクルー達が忙しく持ち場について作業している。
 それもとてもよくあることという感じに見えない程慌てている様だ。
 
 
「船長、何が起こっているんですか?」
「こんな天候は見たこと無いです。」
 
 
 現れた二人に船長はニッコリ微笑んで言った。
 
 
「この海域は10年程前から悪天候な海域でして、我々海の男達の間では魔の中海と呼ばれています。ここでは何が起こってもおかしく無い。…必要なことは臨機応変に対応することです。まぁ、見ていてください。」
 
 
 船長はそう言うと機関室に船速上昇を命じる。
 船は30ノットの速度で急速に進み始めた。
 
 
「まだ海の荒く無い今の内にこの海域を超えます。なに、この足の早さなら問題ない。さ、船室にお戻り下さい。」
 
 
 船長がクロノ達を部屋に戻そう促していたその時、突如操舵室の窓ガラスが割れ、操舵手が押し飛ばされた。驚いて操舵手に駆け寄るが既に亡くなっていた。即死だった。
 
 全員が窓の外を見ると、海はうねり、先程見ていたよりもずっと激しい。
 そしてよく見ると波を被る甲板に…いるはずのない人の影。その陰は人間の形をしているが、皮膚は青く人間らしいとは言い切れない。
 
 
「何だありゃ!?人か?」
 
 
 クルー達が騒がしくなりだす。
 すると、どこからともなくBGMがかかり始めた。
 
 ラテンの乗りでムーディーに踊っている謎の来訪者の動きは、とても悪天候で暗雲立ち篭め、波荒れ狂う状況とは似つかわしくなかった。しかし、本人はそれでも全く気にしていない様子…。
 
 
「ウッハー!サイコーだねぇ?ご機嫌だねぇ〜?海の男は嵐が似合うぅ〜♪俺様はプリティダンディなぁ〜、海のプリンスだぜぇ〜い!イェイ!♪
 
 
 …謎の来訪者はわけもわからぬ歌詞に、これまたどっから出したかわからない桃色に塗装され、ご丁寧に魚の骨の柄の付いた可愛いウクレレで、パランポロンととても今の状況に似つかわしくない穏やかなメロディーを付けながらノリノリの様子だった。
 
 
「…なんなの?あのダサくて気色悪い生物は。」
「…俺、こいつどっかで見たことある気がする。」
 
 
 シズクが露骨に嫌悪を表明する。
 クロノは過去で見た記憶を辿っていた。
 その時、謎の来訪者が操舵室から見るクロノの方を見た。
 
 
「おぉっとぉ!見つけたぜぇい!マイブラザー!」
 
 
 そう言うとクロノに対して指を指し、次の瞬間人さし指を一本立てると「来い来
い」とまるで言っているかの様に動かし、ご丁寧に口をわざとらしくぱくぱくしてみせて呼び掛けた。
 クロノは内心頭が痛くなるのを感じつつも、今のままでは何も状況が変わるとも思えない為、仕方なく彼の誘いに乗ることにした。
 シズクも渋々クロノの後を追った。
 
 
「何者だ。この天候はお前の仕業か?」
 
 
 クロノが謎の来訪者に問う。
 来訪者は甲板に現れたクロノに対して、突然高速に回転したかと思うと、止まった時には白いタキシードを何故か着こなし、目には銀縁のインテリそうな眼鏡をかけてキリリとした表情をすると、歯をキラキラ光らせ笑顔を見せて答えた。
 
 
おぉぅ!?、初対面の人には『初めまして』とまずは挨拶をすることが礼儀ねェ!ミーはユーのことは御存じだけど、ユーはミーのことは御存じないねぇ!そこんとこ、知ってるおじゃりまするかぁー?キィーー!イェイ♪
 
 
 敬語ともなんとも言い様のない、めちゃくちゃな口調で謎の来訪者は答えた。
 クロノは調子が狂いつつも、彼の言う通り姿勢を正して話す。
 
 
「初めてお目にかかる。俺の名はクロノ。君は?」
 
 
おぉ〜〜〜!ヒャッホゥ!!初めましてェ!ナイストゥミィチュー!ミーの名はリーヴねぇ!…というかぁ?、俺はお前のこと知ってんだよね?え?何故って?そら決まってるべ!
 
 ここであったが百年目!いや、四百年目かぁ!?お前が忘れた言ったとしても、俺は決して忘れはしない!っつか、俺の親父の親父の親父の親父の親父のあー!!
 …まぁ、その昔の奴がお前に負けて無念の最後を遂げたんだ!!!…といっても、天寿を全うしたのは100歳で、長生きしてなぁ?子だくさんだったから親戚が増えまくって仕方なかったんだぜ?えー?ってか、何話してんだ俺?
 
 
 クロノは苦笑を禁じ得なかった。
 こういう時は当たり障りの無いことだけしか語らないのが一番だと思った。
 
 
「人違いじゃないのか?俺は知らない。なんせ初対面だろ?お互いもっと友好的に話そうじゃ無いか?なぁ、リーヴ。」
ノーーーーーーーーーーーーー!!!!!哀しいかにゃぁ〜、ミーとユーは敵と決まってるのねぇ!もう、会ってしまったが運命の悪戯ってもんさぁ!

 漆黒の海!オゥ!
 荒ぶる風!アゥチィ!
 黒き雲!アハァ!!
 
 どれをとっても幻想的で最高のシチュエーション!
 
だが、しかぁーーし!!!
 …ここで残念なことはカメラが回ってねぇってとこかぁ?」
 
 
 そう言うとリーヴは突如再びクルクルと回って止まった。
 止まった時にはまた衣装が変わって、今度はウェットスーツのような動きやすそうな服装に変わっていた。
 
 
「レッツ、ショータイム、イン!!!!
 ヒィアー!チェキラー!イェイ!!!(謎)」

 
 
 リーヴはそう言うと、突然跳躍したかと思うと一気に海中に飛び込んでいった。
 クロノは危険を感じて咄嗟に剣を抜く。
 後方にいたシズクはすぐさま船にフィールドエレメントを適用し、周囲一帯に保護フィールドを発生させた。
 
 海面に時々金髪が見える。何やら泳いでいるらしい。目で追っていると突然海中深く潜ったようだ。
 出てくるのを今か今かと待っていると突然後方から爆発音が聞こえる。なんと後方から一気に跳躍して、空中から船体を水の玉で次々と攻撃していた。
 船は直撃を受けて至る所で爆発が生じ、船員が消火作業を慌ただしく始めた。幸い保護フィールド効果もあり、思ったよりは被害が少ないが、この攻撃でフィールドは消えた。
 リーヴは攻撃を終えて甲板に降り立った。
 
 
ヒュゥ!姑息な真似をするねー?ならこっちもネチネチ姑息に行くぜェ!ホゥ!オォウ!!…ウフゥ!」
 
 
 リーヴはそう言うと再び海に潜ったと思うと、突然甲板の下から底を突き破って出てきた。水柱が立つ。そして、彼はそのまままた上空から今度はクロノ目掛けて急降下してくる。
 クロノは咄嗟に避けたが、リーヴはそのまま甲板を突き破って落ちていった。その穴からも水柱が立った。
 
 
「まずい!?奴はこれを狙って!?」
 
 
 再びリーヴがジャンプしてくるかと思って構えていると、何やら下の方でドカドカ音がする。
 するといきなり下部からも爆発音がしだして船が傾き始めた。
 
 
「な!?」
 
 
 リーヴが海中より跳躍して、再び甲板に降り立った。
 仁王立ちするとキリリとした真面目な表情で言った。
 
 
「フ、俺はお前とまともに戦う必要はない。…オゥ!決まった!!なんて罪なクール!ゾクゾクするぜぇ!
 
キィー!バァイ!ベイビィ、シーユー!」
 
 
 リーヴはそう言うと海中に戻っていった。
 すると急速に船が動き始める。
 船員達はあまりに突然の事態に右往左往していた。
 船長がそれを叱責して避難誘導を始める。
 クロノも誘導を手伝っていると、シズクが前方を見て驚きの声を上げた。
 前方には巨大な渦が渦巻いていたのだった。
 
 
「なんだと!?あれはトルースの大渦潮!?なぜだ!?中海にいたはずが!?」
 
 
 船は驚くべき速度で北上していたのだった。
 船長は急いで救命ポッドを次々に出発させた。
 しかし、遅きに失した感があった。
 
 
「くぅ、間に合わん!?クロノさん!船にいるよりマシだ!早く救命ポッドに乗って下さい!!!」
 
 
 二人は船長と共にポッドに乗った。
 ポッドはどんな高波が来ても沈没しないように、テントのように覆われたゴムボートになっている。ポッドは一応簡単なエンジンも付いているが、既に大渦潮の影響圏に入っている為焼け石に水だった。
 
 徐々に船とポッドが大渦潮に飲み込まれ、轟音と激しい揺れがポッドを襲う。
 遂にクロノ達のポッドも飲み込まれた。
 とてつもない揺れが中にいる者達を激しく襲った。
 
 
 その時、突如クロノ達のポッドが裂けて海水が大量に侵入した。
 
 
 大渦潮は船と全てのポッドを飲み込んだことが無かったことのように、変わり無く渦を巻き続けていた…。

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 お読み頂きありがとうございます。
 拙い文章ですが、いかがでしたでしょうか?
 
 宜しければ是非感想を頂けると有り難いです。励ましのお便りだと有り難いです
が、ご意見などでも結構です。今後の制作に役立てて行ければと考えております。
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是非是非お寄せ頂ければと思います。

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