クロノプロジェクト正式連載版

第62話「参上!ガルディン・イースターズ」
 
 
かるな!」
「は!」

 
 
 ミント率いるゲリラ集団ガルディアン・イースターズ(以下略GE)はガルディ
ア城の北西側城壁の塔を爆破し城内へ侵入した。
 部隊は場外に2部隊、城内に2部隊の計4部隊という多くの動員数で、何時に無
くGEの勢力は強いものだった。
 
 
「うぬぬぬぬぬぬぬ!何故、こう都合の悪い時に!!!」
 
 
 ヤクラは苦々しく歯噛みして悔しがり、怒りに震えていた。
 さっと後ろを振り向くと、控えていた部下に怒鳴り命令した。
 
 
「えぇい!何をしておる!全員ひっ捕らえるぞ!」
「ははぁ!!!!」

 
 
 ヤクラはそう言うと、城内の他の兵士をまとめてGEの襲撃現場へ直行した。な
んとしてもディアより先に事態を収拾せねばならない。そうしなければ今の地位す
ら危うくなると思うと胃が次第に痛くなってきた。ヤクラはその痛みさえ全てGE
討伐の執念に変え、武器を持って少々中年太りした体を揺らし先頭を走った。
 
 
 
 GEが侵入した入り口付近には、ミント率いる部隊が城の兵隊と戦っていた。
 
 
、いつも数だけはいやがるなぁ!」
 
 
 ミントはそう言うと手を前に出し叫ぶ。
 
 
 
「アップヘイバル!」
 
 
 
 
 ミントの手の平から魔法の光が地面に向かって放射された。
 放たれた光は地面に沈むと黄金の閃光を放ち、一気に地響きが起こって床石ごと
地面が轟音を響かせて隆起した。高く突出した隆起は天井を突き破る。
 突然出現した針のように鋭い土の隆起に、回避出来なかった数人が圧殺された。
そして、魔法の効果が切れると自然にその隆起はシパシパと沈んで行った。
 
 兵隊達が惨状にたじろぐ。
 突然現れてエレメントで攻撃され対応に苦慮している兵隊達。…どうやらあまり
実戦経験が無く、また統率もされていないようだった。
 ミントはそれも織り込み済みと言わんばかりに突進して、背後のベルトに固定し
ていた小太刀を鞘から抜き、次々と切り込んで行く。その動きは風の様に速く、水
のように流れるような太刀筋だった。
 
 
「早い!?!なんなんだアイツ!?」
 
 
 衛兵達が一様に驚き恐怖し、浮き足立った。
 
 
「ヘヘヘ!貫禄の違いさ!みんな、派手に暴れろよ!」
「アイサー!」
 
 
 若頭の号令に、仲間達も次々に城への派手な進入を開始した。
 
 
 
 一方その頃、クロノ達はまだ牢屋にいた。
 
 
 
「爆発音?」
「なにかしら?」

 
 
 シズクが外の音に反応し二人に問いかける。マールも同様に外の様子を窺うが、
クロノが突然二人を静止した。
 
 
シ!静かに。誰か来るぞ。」
 
 
 三人が静かに耳を澄ましていると、階段の方向から走る靴音が聞こえて来た。
そして、その靴音の持ち主はすぐに牢屋の前に現れた。
 
 
む!?何者!?うぉ!ぐあぁ!!!
 
 
 気付いて走り寄ってきた看守は相手を取り押さえるどころか、簡単にパンチ一発
でダウンさせられてしまった。看守の腰にぶら下がるキーチェーンを奪い取ると、
3人のいる牢屋に向かった。そして鍵を開け始める。
 
 
「何者だ?」
 
 
 牢の戸の外で鍵を開けようとしている者に、クロノが問い掛ける。
 
 
「ガルディアン・イースターズさ。」
 
 
 外からは低い声がする。声の音色から自分達とそう世代は変わらないだろうと推
測される。
 しかし、そんなことより3人は初耳の名前に驚き、不思議そうにマールが聴いた。
 
 
「ガルディアンイースターズ?」
 
 
 鍵を開けながら男が答える。
 
 
「あなたがマールディア王女様で?」
「え?私の事を知ってるの?」
「あなただけじゃない、クロノ殿下もご一緒ですね?」
 
 
 3人は顔を見合わせて驚いた。自分達の存在を知る者が他にもいる…そう思うと
何のために鍵を開けようとしているのかが気になる。
 
 
「イースターズとは何だ?」
 
 
 男はクロノの問いには答えずに鍵をカチャリと開けた。
 戸の外には先ほど自分で予想した通り若い男がいた。戦闘服らしいスーツに身を
包み、腰には銃とナイフを、腕にはエレメントをはめた腕輪の様な物を身に付けて
いる。
 男は戸を開けると言った。
 
 
「話は後です。俺達がサポートできるのはこれくらい。」
 
 
 男はそう言うとさっさと走り去ってしまう。
 3人は彼を追って階段を駆け上がった。
 
 階段を上がるに従って、1階の方が凄く騒がしいことが伝わってくる。最上段を
上った先に展開していたのは激しい戦闘だった。
 先ほどの彼と似たような服装の集団が大勢の城の衛兵を相手に戦っていた。その
彼は仲間の一人、一際若い金髪に青い目の青年に言った。
 
 
 
 
「ここはオレに任せてください!お頭は殿下達を!」
「グリーン!死ぬなよ!」

 
 
 どうやらその男は彼らの頭らしい。
 グリーンと呼ばれる先ほどの男に頭と呼ばれた男はそう言うと後退した。その時、
クロノ達3人の姿を見つけて走って近づいてきた。
 3人は思わず身構える。だが、彼もまた危害を加える気は無い様だ。
 彼は素っ気無く言った。
 
 
「お前がクロノか?運が良い奴だな。」
 
 
 クロノは相手の態度にムッときたが、努めて冷静に言った。
 
 
「君が助けてくれたのか?その、頭って?」
あぁ、俺達が助けた。割にあわないがな。
 俺の名はミント・グリーン。イースターズの頭だ。宜しくな。
 お、そうだ!これがあんたらの荷物だ!」

 
 
 ミントは自分が背負っていた袋を3人の足下に置いた。
 マールがしゃがみ、中を確認すると素直にお礼をした。
 
 
「ありがとう!」
「へへ。礼には及びませんぜ、女王陛下。
「え、女王陛下!?え、私が?」
そうです!あなた以外に誰がガルディアを継ぐと?俺達は王国を復興する為
 に活動してるんです。」
 
 
 若頭の言葉は衝撃の連続だった。しかし、どうやって自分たちのことを知りえた
のかが気になりクロノが問いかけた。
 
 
「どうして俺達のことを?」
「おっと!その暇は無いようだぜ?とにかく話は後だ、ここを出る!折角助けたん
 だ、勝手に死ぬなよ!」
 
 
 若頭はクロノを睨んだ。
 クロノも睨み返して応える。
 
 
「おぅ!」
 
 
 3人はミント達の一団に続いて外へ出た。
 次々に衛兵達が先回りしてクロノ達の前に立ちはだかるが、ミント達の一団がそ
の度に颯爽と先陣を切って粗方倒して行った。おかげでクロノ達はなんの苦労も無
く城壁の外には出られたが、前方にヤクラ率いる銃撃兵が待ち構えていた。
 
 
「ハーーーっハッハッハ、イースターズ共々葬ってくれるわ!」
 
 
 腰に手を置いて胸を張って、高笑いしてヤクラは立ちはだかった。
 そんなヤクラに対し怯むどころか、ニヤリと笑ってミントが言い放った。
 
 
はは!支部長様のお出ましかい?
 何食ったらそんなくそまずい顔になるんだかな!」
くぅぅぅぅー!いつも減らず口を叩きおって!
 生意気なガキがぁ!!!総員、用意!

 
 
 真っ赤になって怒るヤクラの号令下、一斉に銃撃兵が構えた。
 そして…
 
 
「やれーーーー!」
 
 
 ン!パン!パン!ン!
 
 
 沢山の銃声が木霊する。森は振動し、爆竹のように沢山の銃撃音が森全体を揺る
がす様に響き渡った。
 
 
撃ち方やめーーー!!!
 …やったか?」
「やらねーよぉ〜〜だ!バ〜カ!詰めが甘いな?デ〜ブ!」

 
 
 ミントは事前に仕掛けた冷気系エレメントのトラップフィールドによって、銃弾
を氷の厚い壁で受け止めた。そして、彼は不敵な笑みを見せると仲間達と共に突進
し、小太刀で颯爽と次々に銃撃兵を蹴散らしていった。
 ヤクラは必死に兵達を鼓舞してGEに対する攻撃を命じるが、彼が鼓舞している
間にバタバタと倒されて行った。
 
 
ぬぬぬぬっ!!!!小癪なガキがぁ!
 
 
 ヤクラが自分から前に出て来てついに攻撃を開始する。
 ヤクラは手に持つ杖を両手で握った。すると短かった杖が長く伸びて先端に刃が
現れた。ヤクラは仕込み杖を振るい、ミント達に突進してくる。
 
 
「へー!あんたも戦うのかい?」
 
 
 ミントがからかうように言っていると、ヤクラが問答無用に槍を振るってきた。
その攻撃の鋭さに驚いて咄嗟に身を交わしたが、腕に一筋の傷ができ、血が服ごし
に滲む。
 
 
「フンガー!!!!」
「うぉ!?」
 
 
 ヤクラは槍をブンブンと振るって次々にGEの隊員達に攻撃を繰り出して行く。
隊員達はあまりの勢いに防戦一方になった。

 
うわ、ぐあぁあああ!!!
「レド!?」
 
 
 隊員の1人がヤクラの槍に斬られ負傷する。ヤクラが尚も攻撃を続け止めを刺そ
うとするが、その攻撃は不意に終わる。
 
 
「ちぃ!!!」
「やらせない!」

 
 
 クロノはヤクラの槍を剣で受け止めると押し返した。
 ヤクラは蹌踉けて後退する。
 
 
「ちぃ、潮時か…引け!
 
 
 ミントはそう叫ぶと信号弾を放り投げて銃で撃った。
 信号弾はドーンと大きな音と光りで仲間達に撤収を呼び掛ける。するとその音を
聞いて一斉に撤退が始まる。
 
 
「悪いが支部長さんよぉ、あんたとの決着はお預けだ!」
 
 
 そう言うとミントは煙り玉を投げて辺りを煙りに巻く。
 ヤクラはまともに煙りを吸ってしまい、ゲホガホ咳き込んで苦しんでいた。

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