クロノプロジェクト正式連載版
第55話「旧市街」
翌日
「…噂に違わないな。」
「えぇ。」
「…。」
三人は街の北にある旧市街地に来ていた。
街は新市街地とは全く変わって静まり返っていた。たまに歩く人がいるが、見るに
耐えない服装の浮浪者然とした者か、連邦の兵士と思われる軍人の姿だった。
「とりあえず、普通にリーネ広場を目指しましょう。みんな新市街地の人間らしく振
る舞うのよ。間違っても敵意を出さないでね。」
二人が頷く。
シズクはそれを確認すると歩き始める。
街は淀んだ空気で満たされていた。道には線路が引かれており、所々に砕石が沢山
積まれたトロッコが置かれていた。
「なぁ、シズク、これがエレメントストーンって奴か?」
「えぇ、この全てがそうじゃないけど、その成分を含んだ石ね。」
「エレメントストーンって?」
初耳の言葉にマールが2人に尋ねると、シズクが答えた。
「…簡単に言えば、魔法の石ね。魔法の成分を秘めた石で、この星の天然現象に様々
な影響をもたらしている物質よ。あの箱いっぱいでとれる量は一摘み程度だけど、
それだけあれば恐ろしい天然現象が起こせるわ。」
「天然現象?」
「例えば天のエレメントストーンは太陽石と呼ばれいて、莫大なエネルギーを溜め込
むこともできれば、それを安定して放出する事もできるの。これを使えば太陽の光
だけで雷を発生させることもできるし、大昔の文明はこれをエネルギー供給設備と
して利用したという説もあるわ。」
「太陽石!?うそぉ、あれって埋まっているものだったの?」
「知ってるの?」
「え?えぇ、ちょっとね。」
「そう、太陽石に限らず古代の伝説に残る魔法の石は全てエレメントストーンと何ら
かの形で関係していると考えられているわ。」
シズクの説明で感心するマール。そこに少し険しい表情で聴いていたクロノがシズ
クに尋ねた。
「なぁ、さっき天然現象と言ったが、あれで何をする気なんだ?」
「わからない。でも、途方もないエネルギーを生み出す物質であることは確かね。」
「そうか……。」
マールがクロノを心配そうに覗き込む。
クロノはそんなマールの表情を見て言った。
「マール、早く俺達の時代に戻ろうな。」
「…えぇ。」
三人は無事に何ごともなくリーネ広場に辿り着いた。しかし、その姿はあまりにも
無惨なものとなっていた。入り口からはレールが敷かれており、奥へと走っていた。
「…そんな。」
「…予想はしてたが、ひでぇ有り様だな。」
「…落ち込む必要は無いわ。ゲートのあった場所にさっさと行きましょう。」
「…うん。」
奥へと進んで行く。
すると過去にポッドが置かれていた場所に辿りついた。
「ポチョ!」
「ぽー!」
ポチョが飛び出して近辺をあちこち走り回る。
「ぽー!ぽぽー!」
「え、小さすぎるって?頑張ってよ!ポチョ!」
「ぽー!」
ポチョが近くの木の根元辺りに立ち止まり、ゲートを開こうと必死に集中している
模様。しかし、なかなか開かない。
「ポチョ!頑張って!」
「ファイトよ!ポチョ!」
シズクとマールにエールを送られて俄然頑張るポチョ。しかし、なかなかゲートは
開きそうにない。ポチョはより一層集中した。
「ぽーーーーーー!!!!!」
プッ
「へ!?」
ポチョは思いっきり踏ん張ったので屁が出てしまった。その拍子に力が抜けてへた
り込んでしまった。
「ちょっと!ポチョーーー!しっかりしてよぉ!もぅ。」
「無理みたいね。全然穴が大きくならないもん。ごめんね、ポチョ。
無理言っちゃって。」
「ぽー。」
ポチョは申し訳なさそうな顔でマールを見ていた。マールはポチョを静かに抱き上
げて抱き締めた。
「仕方ないわ。他の道を探しましょう。」
「あぁ。一度戻って考えようぜ。」
「そうね。」
3人はリ−ネ広場をあとにした。
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