クロノプロジェクト正式連載版

第49話「開かれた扉」
 
 
 日…
 
 
「サイラスの出身地とな?」
「はい、サイラスの親族の方にも御挨拶できたらと。」

 
 
 再度謁見した2人は、昨夜決めた通りに国王に尋ねた。
 国王は不意の話だったが、笑顔で答えた。
 
 
「そうか、…思えば何と哀れなことだ。サイラスこそ誠の勇者であると言っても過言
 ではあるまい。多くの民の為に独り背負い戦ったサイラスの姿は、国民に深く留ま
 るべき精神だろう。サイラスの実家ならばチョラスにある。わしからも多大なる感
 謝をしていると伝えて欲しい。」
「わかりました。では、私達はこれで。」
「うむ。そなたらの訪問ならばいつでも待っている。達者でな。」
「はい。」
 
 
 2人はその後、国王の計らいで裏口からこっそりと城を出た。正門から出ては民衆
に捕まるであろうことを危惧しての配慮だった。
 2人は国王の配慮に感謝しつつ、ガルディアの森へ入った。
 
 
「しかし、チョラスって星の裏側よ?こっから2万kmは離れてるわ。」
「う〜む、この時代は定期航路は使えないしなぁ。シルバードがあればすぐに行ける
 のに。」
「…とても現実的じゃないわよね。う〜ん、どうしよっか?」
 
 
 2人は距離を思うと憂鬱になった。このガルディアに来るまでの単調な時間を考え
ると特に。クロノがシルバードに乗ってと考えるのも無理のないことだった。しかし、
2人に妙案も浮かばず、クロノがフゥと一息ため息をつくと言った。
 
 
「どんな距離でも仕方ない。そこにしか手がかりが無いなら、行くしかないだろう?」
「えぇーーーー!!…うん。」
 
 
 納得したくないが納得せざるを得ず、彼女はうんと頷くしか無かった。
 クロノはそんな彼女を察して言った。
 
 
「まぁ、陸路で行くんだ。途中フィオナの森にも寄って確かめられる。もしかしたら
 行き違いかもしれないじゃないか?」
「…そうね。そうだと良いね!」
「あぁ!」
 
 
 そうこう話していると、前方の茂みから何やら人の気配がするのに気がついた。
 2人は静かに近付き、茂みから様子を見た。
 
 
「ブツブツブツブツ…」
 
 
 前方には1人の少女とポヨゾーらしき物が動いていた。服装がこの時代の人間らし
くない。
 
 
「ポヨゾーが動いてるぞ!?!」
「どうなってるのかしら?」
 
 
 2人は暫く様子を見る事にした。
 少女は手に持つ小さな機械の様な物を眺めて苛立っている様だ。
 
 
「あ〜、もう、近くなのにシーケンサーの役立たず!」
「ポー!」
「何よ、機械のせいにするなって?」
「ポポー!」
「わかってるわよ。ポチョの言う通りです〜。あーもう、
 ゲートはこんなに近いはずなのにぃ〜〜〜!!!」

 
 
 2人は少女の話を聞いて顔を見合わせた。
 
 
「ゲート!?!」
 
 
「どういうこと?私達以外にゲートを知っているなんて…」
 
 
 二人は突然目前に現れた少女がゲートを知っている事に驚いていた。しかし、そ
の時マールが足下の枯れ枝を踏んでしまい、パキという音が甲高く響いた。
 
 
「誰!?そこの茂みにいるのは分かっているわ!」
「(クロノ)やば!」

 
 
 二人はおとなしくジッとしていた。
 
 
「出て来ない気?なら、こっちから行くわ!!!」
 
 
 少女は構えると、すぐに茂み目掛けて蹴りを入れた。クロノは慌てて立ち上がった。
 
 
「ちょ、ちょっ待ぁっぐぁ!?!
「!?」
 
 
 クロノはもろに少女の蹴りを腹に食らって固まっていた。
 少女は勿論、しゃがんでじっとしていたマールも固まっていた。
 
 
ど、どうして警告した時に出てこないのよぉ!!
 あ、あたしは悪くないから
!」
いぢぢぢぢぢぢ…痛ぅ…すまん、確かに悪かった。いぢぢぢ!
 効くなぁ!すげーキックだぁ!久々に効いたぁ〜〜〜!」

「大丈夫〜?今治してあげるね。」
 
 
 マールがクロノの腹に手を当てる。すると手が光り輝いて癒しのオーラを透過させ
た。するとクロノの腹の痛みも消えた。
 
 
「サンキュ!助かったぜ。あ、自己紹介が遅れたな、俺の名はクロノ。」
「私はマール!」
「俺達も君の探しているゲートを探しているんだ。」

 
 
 2人の自己紹介に、少女は目をぱちくりして尋ねた。
 
 
「え?じゃ、あなた達も未来人?」
 
 
 クロノは頭を掻きつつ笑顔で答えた。
 
 
「あぁ、そういうことになるな。」
「ゲートを知っているってことは、ゲートでこの時代に?」
「あぁ、そうだ。」
 
 
 クロノの答えに、少女はしばし考えたような仕草を見せると言った。
 
 
 
 
  シズク参上!
 
 
 
 
「そうだったの。私以外にも旅をしている人がいるとは思わなかったわ!私はシズク、
 私もゲートを使って旅をしている所よ。ところで二人はどうやってゲートを渡って
 来てるの?」
「いや、俺達は来たくてここへ来たわけじゃないんだ。…巻き込まれてな、帰る方法
 を求めて彷徨っていたんだ。」
 
 
 クロノの頭を掻く早さが増したことに、相当困っていると見受けるシズク。しかし、
彼女はストレートに言った。
 
 
うそぉ、最悪じゃない!もし私に出会わなかったらどうやって
 帰るつもりだったの?」

ん?いやぁ、グランドリオンとマールの持ってるペンダントを使って反応させれば
 ゲートを開けるんじゃないかぁ〜…なんて、…ハハハ。」
「…ペンダント?」
「これよ。」
 
 
 マールが胸元からペンダントを取り出して見せた。
 シズクがそれに向けてシーケンサーをあてると、何やら機械が反応している様だ。

 
 
「…ES1万ドリストン…アシュティニウム反応99、7%………ピュアドリス
 トーン!?でも、放射量が少ない、どうなってるのかしら…どこでこれを?
 
 
 彼女の問いかけに戸惑いつつマールは言った。
 
 
「え?これは私の家に伝わる代々の家宝なの。」
「家宝?…これが?」
「どうしたって言うんだ?」
 
 
 シズクがとても驚いた様子で語り始めた。
 
 
「これは普通の人間なら精神崩壊を起こすレベルの魔力線を含んでいるわ。でも、不
 思議な事に、その魔力線は全てこのペンダントの中に内包されて外部に放射されて
 いないの。凄いわコレ!確かにこれならゲートを反応させる力を引き出せるかも知
 れない。」
 
 
 マールが首を傾げてシズクに問う。
 
 
「あのぉ、ま、魔力線?
「あら、知らないの?ということは私の時代よりは昔なのね。魔力線とは人間が持つ
 様々な奇跡的力の源よ。古代にはこの力を魔法という形で最大限に引き出して崩壊
 した文明もあるわ。」
「ジールね?」
「そう!よく知ってるわねェ!こんなマイナーな文明!有史以前の歴史
 はガルディアの歴史ではほとんど忘れ去られているのに。」

 
 
 シズクの言葉にマールは胸を張る様に自慢げに言った。
 
 
「フフフ、私達ジールに行ったことあるもんね〜♪」
「あぁ、崩壊の瞬間にも立ち会ったぜ。」
 
 
 2人の言葉にシズクは目を輝かせてうらやましがった。
 
 
「うそぉ!良いなぁ〜!」
「ははは、でも崩壊してるんだから良いってもんでもないぞ!」
 
 
 
 3人は意気投合し暫く話しに花が咲いた。彼等は互いのこれまでの話をしてお互い
に情報を交換しあった。
 そして…
 
 
 
「…というわけだ、俺達も一緒に付いて行って良いか?
良いわ!困ってる時はお互い様だし、旅は道連れっていうものね?
 大勢の方が私も心強いわ。」

「じゃ、決まりね!宜しくシズク!」
「えぇ、宜しくね!」
 
 
 3人は行動を共にする事にした。そうと決まるとシズクはシーケンサーを出した。
 マールが気になって尋ねた。
 
 
「さっきから気になっていたんだけど、これ何?
「あ、コレ?これはゲートシーケンサーと言って、半径100km先までの範囲で
 ゲート反応を探知することができる機械なの。」
「へぇ〜、じゃぁ、これでゲートは探せるのね?」
「えぇ、でも、あまり近くなり過ぎると反応が大きくなり過ぎて逆に分かりにくいの
 が難点なのよ。まぁ、それでも色々な探索モードがあるから、ゲートとは違う反応
 を調べる事でより近付く事ができるわ。」
「凄いのね〜。じゃ、早速行きましょう!」
「えぇ。」
 
 
 シズクがシーケンサーを起動すると、探査モードを変更して詳細な検索を始めた。
シーケンサーのデータを頼りに歩き出す3人。反応はどんどん近付いてくる。
 
 
「5m…4m…3m…2m………1mね。もうかなり近いわ。」
「あっ、あそこ!?」
「え?」

 
 
 マールが指をさした。2人がマールの指し示す方向を見ると、その方向に遂に目的
のものが青く輝いているのを見つけた。
 
 
「ゲート!?!」
 
 
 思わず3人の声が一致した。
 
 
「やった!これで帰れる!」
 
 
 安堵した様に言ったマールに対して、シズクが静止する様に言った。
 
 
「まだ安心するのは早いわ。このゲートが何処に繋がっているかはわからないんだか
 ら。」
「あー、う〜ん。そうね。でも、調べる事は出来ないわ?」
「それは大丈夫、シーケンサーをゲートに合わせて…
 承認コード、シズク、γー5β起動
 
 
 シーケンサーから青い光が走る。ものの3秒程経過した後に光線は消えた。
 するとシーケンサーが反応する。
 
 
「えーと…、この反響データから推測すると未来行きのゲートね。年代的には4〜5
 00年って所かしら。比較的近未来よ。」
「凄い、そんなことまでわかっちゃうんだ〜。」
 
 
 マールが感心して言った。
 クロノもシズクの言葉に希望を感じた。
 
 
「4〜500年なら上手くすれば俺達の時代に戻れるってことだろ?」
「そうね。AD1005年前後に戻れる可能性も確かにあるわ。」
「やった!さ、早く行こう!」
 
 
 嬉しくてマールがはしゃぐ。
 そこにクロノが素朴な疑問を投げかけた。
 
 
「行くのは良いんだが、…どうやってあの小さな穴に入るんだ?
「あ!?どうするのシズク!?!」
 
 
 2人の焦りを見てシズクが動じずに言った。
 
 
「それは大丈夫、ポチョ?」
「ポー!」
 
 
 シズクがポチョを呼ぶ。
 ポチョはシズクの声を聞くとすぐにゲートの方へ向かっていった。
 
 
「おいおい、まさかポチョだけしか行けないのか?」
「あのね〜…まぁ、見てなさいよ。」
「あ、あぁ。」

 
 
 ポチョはゲート手前で止まる。すると突然ポチョの身体が発光しだして稲妻のよう
な光線が走る。その光線はゲートの方に向かって飛んだかと思うと、突如ゲートは急
拡大し、人が数人入っても余裕がある大きさに拡大した。
 
 
「な………、どうなってんだ?」
「ポチョがゲートを開くのよ?ま、詳しい事を話してもわからないと思うから、そう
 覚えておいてちょうだい?」
「あぁ。」 
 
 
 シズクの言葉にどう納得していいのか分からないでいる2人を尻目に、シズクはマ
イペースにシーケンサーを仕舞うと言った。
 

「さ、行きましょ!」
 
 
 そう言うと颯爽とシズクが先にゲートに入って行った。
 
 
「…俺達も行こっか?」
「う、うん。」

 
 
 2人もシズクの後を追った。

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