クロノプロジェクト正式連載版
 
 
 御覧の皆様へ
 
 この物語も昨年の25日の先行公開版から始まって早くも一周年を迎えました。
正式連載版も来年3月を過ぎれば一周年となります。
 この一年、本当に色々と有りました。思えば何でもない様な事ばかりだったり
もしますが、忘れられない一年でもあり、長い時間をかけて作り続けたこの作品
がこうして徐々にでは有りますが、公開が出来ている事は感慨深いです。
 毎度感想を下さる皆さん、本当に有り難うございます。すぐに返信したりはな
かなかできていませんが、皆さんからの感想は全てに目を通しております。とて
も温かな感想から厳しいご意見まで様々な感想を頂きましたが、それらのコメン
トのどれにも本当に励まされました。感想って本当に良いものです。それだけで
元気も湧きます。一年を続ける上でこうした支えはとても重要なものだと感じま
した。
 
 一年という時間。それは長い様で短い時間ですが、その一年が常に同じ一年で
あることは無いわけで、人生の中で同じ歳であることが常に無い様に、その時間
はその時で過ぎ行くものです。人によっては戻りたい人もいれば、その時間に居
続けたい人、そして未来に行きたいと言う人もいるでしょう。
 私達には常にそれらの思いに関わらず時は過ぎ行き、決して戻る事ができませ
んが、そんな思いを実現し、そして旅をするのがクロノ達の存在です。
 過去を知り、現在を変え、未来をも変えるクロノ達。しかし、その結果として
現れた新たなる未来。これらは彼らでさえも時間が自由にならない現実を示して
いるわけですが、そこはクロノ達。持ち前の明るさと行動力で新たなる未来を切
り開くのだと思います。彼らの行き来する時間も歴史の一部であり、そして、戻
らない人生という冒険なのかもしれません。
 
 そんな彼らの冒険を今後も見守って頂ければ幸いです。そして、新しいクロノ
ファンとして過去の冒険を振り返り、新しい未来への希望を抱いて前へ進む人々
を作る一助となれば嬉しいです。
 
 2005年はクロノ・トリガー10周年という節目です。こちらを御覧になっ
ている皆さんと明るいクロノの誕生祝いが出来れば良いですね。
 
 そんな日が来る日を願って。
 …本年は本当に御覧下さり有り難うございました。
 来年もCPシーズン1は9月22日まで続きますので宜しくお願いします。
 
 では、皆さん、良いお年を。

第42話「妻1」
 
 
 宅の途上、2人はマールを連れて一緒に食卓を囲もうと話していた。そこで
フィオナの家にマールを迎えに行くことになった。
 
 クロノはソイソーを外に待たせて、彼女を呼びに家に入る。
 
 
「ただいま!」
 
 
 元気よく声を上げて家に入るクロノ。そこに奥からフィオナとマールが現れた。
 
 
「おかえりクロノ。」
「おかえりなさい、クロノさん。」
「これからソイソーの家で食事の誘いを受けているんだが、どうだ?」
 
 
 クロノがニコニコと笑顔で言った。だが、2人の方は笑顔というより真面目な顔
をしている。マールが言った。
 
 
「…クロノ、ちょっと待って。フィオナとあなたが帰るのを待っていたのよ。」
「え?」
「クロノさん、ソイソーさんには私から事情をお話し致しますから、今夜は私の紹
 介する方に会って頂けませんか?」
「ん?誰なんだ、その紹介する人って。」
 
 
 唐突な話に思わず聴いた。
 フィオナは静かに答える。
 
 
「…カエルさんの奥様です。」
「え!?」
 
 
 クロノは彼女の言葉に大変驚いた。と共にとある想像が浮かぶ。それは誰もが思
い浮かべるであろう、相手の姿であった。
 
 
「マジ…、ソイソーの奥さんでも驚いたけど…カエルにもいたのか…。」
 
 
 フィオナがソイソーに事情を話すと、ソイソーは快諾して家に帰って行った。
 
 
「お二方の探しておられるカエルさんのことは、彼女が一番よく知っています。
 詳しい話は彼女から聞いてみると良いでしょう。」
「おい、待てよ。なぁ、何故すぐにそのことを話してくれなかったんだ?」
 
 
クロノの当然の問いかけだが、フィオナは答えを避けた。
 
 
「…それについては、後ほどゆっくりお話しましょう。
 まずは奥様の所へ行ってから。」
「…わかった。」
 
 
 2人は彼女の案内でカエルの家に向かった。家は湖の近くにあり、月明かりで綺
麗に湖面が輝いている。神秘的という言葉が相応しい美しさだ。
 
 
「綺麗、凄く静かで良い場所ね。」
「ここは昔私たちの会った家があった場所なんですよ。」
「そうなの?」
「えぇ、ですが、湧き水がわき出してから村ごと家を移動したのです。でも、カエ
 ルさんだけはここが落ち着くということでしたから、奥様とご一緒にここで暮ら
 しておりました。」
「そう、綺麗だものね。その気持ちわかるわ。」
 
 
 フィオナの話通り、この湖は元々はオアシスが有った場所だった。今ではそのほ
ぼ全域に近い大きさの湖が広がり、後の時代には「フィオナ湖」と呼ばれるに至る。
 
 湧き水は元々オアシスに湧水が有った事も有り、その存在自体は突然生まれたも
のではない。しかし、森が形成され巨大に繁茂する事で、沢山の雨水を西はミスリ
ル山脈が、北はデナドロ山脈が吸収し、地下水脈へ流れる量が飛躍的に拡大したこ
とにより、それまで流れていた供給量の倍以上の湧水が出る様になった。また、以
前は乾燥し切っていた大地が今では湿度を持つに至った事もあり、蒸発する量も減
少したことも一因としてあげられる。
 
 話していると前方に家が見えた。
 木で作られたこざっぱりとした家。だが、周りはとてもよく手入れされており、
小さな菜園や花畑など、住んでいる者の品位の良さを感じるとても質素ながら洒落
た風情だ。
 フィオナの近くで足を止めると、2人の方を振り向き言った。
 
 
「さぁ、私はここで帰ります。あとは奥様とごゆっくりお話し下さい。
 家の鍵は開けておきますから、いつでも帰って眠れる様にしておきます。」
「ありがとう。フィオナ。」
「では、おやすみなさい。」
「えぇ、おやすみなさい。」

 
 
 フィオナはそう言うと一礼して自宅に帰っていった。
 2人はフィオナが帰ったのを見届けると、お互いに顔を見合わせ頷き、目前の家
の玄関へ歩いた。
 クロノが家の戸をノックする。中から声がした。とても奇麗な声の持ち主だ。
 
 
「…クロノさん達ですね。戸は開いております。お入り下さい。」
 
 
 クロノは戸を開けた。そこには長く透き通る桃色の髪をした女性が白いローブを
着て立っていた。
 
 
「あなたがカエルの奥さんですか?」
「そうです。私はレンヌ。」
 
 声に違わず美しい容姿に2人は圧倒され、クロノはともかく女性のマールでさえ
も思わず言葉に出る程だった。
 
「あの…お綺麗ですね。」
「まぁ、ありがとう。さぁ、中へお入り下さい。」
 
 
 レンヌは微笑んでクロノ達をダイニングに案内する。
 部屋の中は木々の香りと美味しそうな香りが漂っていた。レンヌが2人に椅子に
座る様促す。2人はそれに従い席についた。
 テーブルは元々は二人用程度の大きさの物だが、四方に椅子を置くことで四人が
同時に座れる。
 
 
「今日はお二人のために久々に腕を振るわせて頂きました。食事はまだでしょう?
 それとももうお済みですか?」
「いえ、まだです。」
「ははは…オレ、腹ぺこです。」
「フフ、沢山作りましたから遠慮なくお召し上がり下さい。」
 
 
 2人ははレンヌの手料理をたっぷり食べた。
 食事が終わると3人は居間に場所
を移した。居間には絵を描く道具が置いてあり、様々な森の人々の絵が描かれてい
た。その中にはカエルの絵もあった。
 
 
「あぁ、カエル!」
 
 
 マールがカエルの絵を見つけた。とても上手く描けており、美しい森の中で家の
外にある湖を背に立つ蛙の照れた様な表情があった。そこには昔見たままの彼が確
かにいたことが示されていた。
 
 
「…これは私の1年前の絵です。初めて絵を始めた頃のものです。」
「初めて?うそ〜、上手〜い。」
「そうですか?有難うございます。」
「あのー、こっちの描きかけの人は?」
 
 
 クロノが描きかけの絵を見てレンヌに問う。
 絵には1人の30代半ばのきりりとした男性が描かれていた。よくみると男性の
服装はカエルの絵と同じに見える。
 
 
「夫です。」
「そうなんだ………いぃ!?コレ、カエル!?!
「そうです。」
 
 
 2人は人間の姿のカエルに驚いていた。まさかカエルが人間に戻っているとは考
えもしていなかたったが、2人が結婚するには人種の差を考えると妥当な線かもし
れないと2人は想像した。
 クロノが確認する様に聞いた。
 
 
「本当にカエルなんですか?」
「えぇ。本当にそうです。」
「しかし、じゃぁ、フィオナの話では戻ったなんて話は一言も…。」
「そうですね。彼が真の姿を見せたのは私のみ。この森で真の姿を見た人はいない
 でしょう。だから誰も知らなくて当然です。しかし、カエル…今は彼は人間の姿
 に戻ったのですから、グレンですわね。彼の姿を私は昔から知っていました。」
「どういうことです?」
「強い力を持つ魔族なら、どんなに違う姿をしていても見破る事はできます。私に
 は彼の姿が分かっておりました。ですが、真の姿を知る事が出来ない人々が人間
 に限らず大勢なのが現実です。だから私は絵を描く事にしたんです。彼の絵を。」
「そうでしたか。」
 
 
 二人は何を言って良いかわからないでいた。
 そんな彼らにレンヌが語り始める。
 
 
「お二人が夫をお探しになっていることはフィオナから聞いています。
 私は正直に言えば…初めは会うつもりはありませんでした。」
「…何故?」
 
  
 彼女の言葉に不安げに問うマール。
 レンヌはしばし間を置いて答えた。
 
 
「…私達魔族は全ての人間を信用しているわけではありません。フィオナみたいな
 人間が全ての人なら…私も信用できたでしょう。でも、そんな方は残念ながら限
 られています。」
 
 レンヌは表情はとても哀しそうだった。その表情が彼女の味わった様々な現実を
表しているかの様に思われる。
 
「では、…何故私達と会うつもりに?」
「それは、あなた達がクロノとマールだからです。」
「…え?…どういうこと?」
 
「とぼけないで下さい。
 あなた方が私達を今の様な状況に至らしめたのですから。」

 
 
「!?!」
 
 
 二人はレンヌの言葉に絶句した。

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 お読み頂きありがとうございます。
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